40年の歳月がもたらした「ビジネスプロセスエクセレンス」という新境地:Process World 2010 Report
独Software AGおよびIDS Scheerのユーザー企業向けカンファレンス「Process World 2010」の2日目には、Software AGのカールハインツ・シュトライビッヒCEOが登場。「企業のビジネスとITにパラダイムシフトを起こす」と同社のソフトウェア戦略を力説した。
ドイツ・ベルリンで開催された「Process World 2010」は、独Software AGおよびIDS Scheerのユーザー企業向けカンファレンスである。2日目の6月9日(現地時間)、基調講演にはSoftware AGのカールハインツ・シュトライビッヒCEOが登壇。ビジネス統合基盤ソフトウェア「webMethods」およびビジネスプロセス分析基盤ソフトウェア「ARIS Platform」の拡充により、企業のビジネスプロセスの最適化を包括的に支援するソフトウェア戦略が描けるようになったことを強調した。
「われわれのソフトウェア製品群は、企業のビジネスとITにパラダイムシフトを起こし、ERPの実装を超える成果をもたらすものだ」――。シュトライビッヒ氏は力説する。
1969年の創設から40年以上の歴史を持つSoftware AGは、主力製品のメインフレーム向けデータベースソフトウェア「Adabas」、開発言語「Natural」を軸に、官公庁や銀行といった大量のデータを迅速に処理する用途に適したソフトウェアを提供してきた。そしてwebMethods、ARISの拡充により、企業をSOA(サービス指向アーキテクチャ)とBPM(ビジネスプロセスマネジメント)という2つの側面から支援できる体制を整備した。
シュトライビッヒ氏は同社のビジネスプロセス関連の製品群について、米GartnerやForrester Researchの調査結果を引用しながら、他社企業のBPMやSOA製品に比べて、「SOAガバナンス」「ビジネスプロセス分析」「SOAライフサイクルマネジメント」などの分野が長けていると話す。
これらの製品群を包括的に活用することで、企業はビジネスプロセスを「戦略の立案」「分析」「デザイン」「実装」「実行」「モニタリングと制御」という6つの観点から最適化できるという。この6つのライフサイクルを回すことで、SOAを用いた低コストのシステム構築が実現し、ビジネスプロセスの分析や自動化を通じて、企業のビジネス全体が最適化される。これこそが、Software AGが提唱する「ビジネスプロセスエクセレンス」のあるべき姿である。
「ビジネスプロセスエクセレンスは、BPMを実現するためのテクノロジーの統合、どんなアプリケーションも吸収するテクノロジー基盤によってもたらされるものであり、企業の総所有コストを最小限にする」(シュトライビッヒ氏)
ちなみに、Software AGによるSOAの中核を担うwebMethodsは、SAPやOracleなどのマルチベンダーのアプリケーションを統合できるESB(エンタープライズサービスバス)の機能を備えている。企業内に既に存在するソフトウェア(ミドルウェア)を中心に各種システムを再構成することが可能だ。
これは企業のシステム構築における「水平統合」のアプローチであり、ハードウェアからソフトウェアまでを「垂直統合」で提供する他ソフトウェアベンダーのスタンスとは一線を画す。「既存システムを捨てずに、再構成して使える」というSOAの利点を生かせることがSoftware AGのユニークな点であり、ビジネスプロセスエクセレンスの実現に寄与するとしている。
シュトライビッヒ氏が紹介したSoftware AGの直近のトピックによると、売上高は10億ユーロを超え、米Coca-Colaやソニーなど名だたる企業を中心に1万超の顧客企業を抱えている。拠点は世界70カ国にあり、総従業員数は6000人超。そのうち3500人がサービスコンサルタントである。
特にIDS Scheerの統合により、ビジネスプロセス分析をコンサルティングサービスとして提供する土台が整った。かつてデータベースソフトウェアで名を馳せたSoftware AGは、創立から40年という歳月を経て、ビジネスプロセスエクセレンスを提唱するサービス企業としての地位を着々と固めつつあるようだ。
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