元気になれない周りの人との関わり方――震災時のメンタルケア:こころの処方箋(2/2 ページ)
がんばっている人は、はげましよりもねぎらいの言葉を求めている――こころの疲れにそっと効くこころの処方箋、今回はあなたの周りの元気のない人々にどのように対応し、勇気付けたらいいのかお話します。
がんばっているときほど、掛けてほしい言葉は「ねぎらい」
「大変ですね。がんばってください」――相手が「よし、前向きな気持ちでがんばろう!」と思っているときにこの言葉を掛けてもらったら、がんばる勇気が湧いてきます。けれども中には、「みんなも我慢してがんばっているのだから、弱音なんて吐いていられない」という方もいます。不自由な環境に耐え、我慢し、自分ができることは「もうこれ以上がんばれない」と思うところまで一生懸命にがんばっている方にとって、「がんばって」という応援のメッセージはプレッシャーや焦りを抱かせないでしょうか。
私たちの多くは学生時代、受験を経験してきました。「どこまで勉強すればいいのか」「自分の学力で志望校が本当に合格できるのか」――先の見えない不安と戦いながら、毎日夜更けまで机に向かい、「もうこれ以上がんばれない」と思うほど、ピリピリとした緊張感の中で必死にがんばりました。そのとき、周りからの「受験勉強大変だね。がんばってね」という言葉に励まされたこともあれば、プレッシャーや焦り、苛立ちを覚えることもあったのではないでしょうか。
さまざまな環境の中で、みんな、一生懸命がんばっています。応援のつもりでかけている一言は、私たちが学生時代に抱いたプレッシャーや焦りと同じ感情を周りの人々に抱かせるのかもしれません。
一生懸命がんばっているときほど私たちは、がんばりを認めてほしいし、ねぎらってほしいと思います。
では、どのように「ねぎらい」を伝えたらいいのでしょうか。その1つとして、「がんばれの時間軸を意識する」という方法があります。「がんばれ」という言葉を過去、現在、未来の時間軸を意識してみると、「がんばったね(過去)」「がんばってるね(現在)」「がんばってね(未来)」となります。
私たちがよく使う「がんばってね(未来)」という言葉は、応援の意味合いも含まれますが、「まだまだがんばれるはずだ」「もっとがんばれ」というニュアンスにも聞こえます。
一方、「がんばったね(過去)」には、これまでのがんばりを認めてくれる印象があり、「がんばってるね(現在)」には、今、一生懸命がんばっていることを見ていてくれる印象があります。
みんなががんばっている今、ねぎらいとともに、応援する気持ちを伝えてみてはいかがでしょうか。
後ろからそっと背中を押す
私たちはさまざまな立場で、さまざまな局面を乗り越えようとしています。どのような難局でも、最終的にはその環境におかれている人が、自分の足で乗り越えるしかありません。
周りに、被災されている方やネガティブな気持ちに引っ張られている方がいたら、「きっと今まで、たくさんの出来事があったでしょう。それを一つひとつ乗り越えてきましたよね。いままでがそうだったように、あなたには困難を乗り越える力があるから大丈夫。一緒にがんばりましょう」と、その人に難局を乗り越える力があることを伝え、再起できることを信頼しましょう。
あなたが話を聞き、一人ではないことを伝え、ねぎらい、後ろからそっと背中を押すことで、相手は難局を乗り越える勇気が生まれます。思いの詰まった気持ちから生まれる言葉なら、きっと伝わるはずです。自分の周りから元気にして行きましょう。
「一番大変だったとき、○○さんのおかげで乗り越えることができました。ありがとうございました」――あなたの関わりで、周りの仲間が1人でも多く元気になってくれるといいですね。
著者プロフィール:竹内義晴(たけうちよしはる)
特定非営利活動法人しごとのみらい理事長。ビジネスコーチ、人財育成コンサルタント。心理学トレーナー(米国NLP協会認定NLPトレーナー)
自動車メーカー勤務、ソフトウェア開発エンジニア、同管理職を経て、現職。エンジニア時代に仕事の過大なプレッシャーを受け、仕事や自分の在り方を模索し始める。管理職となり、自分が辛かった経験から「どうしたら、ワクワク働ける職場が作れるのか?」と悩んだ末、コーチングや心理学を学ぶ。ちょっとした会話の工夫によって、周りの仲間が明るくなり、自分自身も変わっていくことを実感。その体験を基に、仕事で疲れたこころを充電し、仕事のスキルアップや成長感得られる体験を通じて「しごとを楽しくする」NPO法人を設立。コーチングやカウンセリング、チーム作りの指導を行っている。
著書に『「職場がツライ」を変える会話のチカラ』がある。
Twitterのアカウントは「@takewave」。
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