徹底的にやる男、その名も“徹”:オルタナティブな生き方 斉藤徹さん(3/3 ページ)
ソーシャルメディア事例の調査や、マーケティング活用の秘訣を提案する「In the looop」は、ITmedia オルタナティブ・ブログで不動の1位を誇る人気ブログだ。筆者、斉藤徹さんに、激動の半生や人生観を聞いた。
僕は、規模は違いますが、ショーン・パーカーみたいな経験をしてるんです。30億円の資金調達後にも株主としてトップシェアを維持するために、自社株式を担保に銀行から3億円の借金をして自社株を購入しました。未公開株でしたが、当時、僕の保有している自社株式だけで30億円以上の担保価値があるとされていたんです。ところがバブルがはじけ、株式公開も困難になり、この担保価値がなくなった。フレックス・ファーム自体の経営が苦しくなったわけではありませんが、出資者の意向で、個人的に3億円の借金を抱えたまま、会社を辞めざるを得なくなったんです。2001年12月末のことでした。
それからはつらく切ない期間が2年ほど続きました(笑)。銀行から借金返済で裁判を起こされ、粘りに粘ったあげくに敗訴、差し押さえ。結局、親や家族と住む自宅の競売まで経験しましたが、結果的にフレックス・ファーム株式の売却先が見つかり、すんでのところで自宅は維持できました。現在、フレックス・ファームは上場しているKSKの一事業部門となっています。X-Servletも売っていますよ(笑)。
その年は2004年。ちょうどソーシャル・ネットワークのルーツFriendsterが注目を浴びはじめ、日本でもmixiやGREEがスタートした年です。フレックス・ファームの時から、ずっとオンラインコミュニティの開発運営をしていたこともあり、ソーシャルメディアの可能性に強く魅了されました。それから1年ほど事業化の準備を行い、今のループス・コミュニケーションズを立ちあげたのが2005年。ミッションは最初から“Social Media Dynamics”、ソーシャルメディアに特化したベンチャーとしての創業でした。
心の平穏が大切
いろいろな失敗経験を重ね、精神的に追いつめられた時期もありました。でも、失敗をしたとき、自分自身を振り返り、反省できれば、そこで生き方を修正できます。貴重な経験になるんです。逆に、自分が悪いわけじゃない、外部要因のせいだと思ってしまうと、自分だけしか信じられない、最終的にお金しか信じられない方向に行っちゃうんです。僕は失敗から学ぶことができた。だから再出発もできたし、紆余曲折がありながらも、いい方向へ向かって来れたのだと思います。
若いころは拡大志向で名誉欲もあったけれど、それがそもそも失敗の素。もともと金銭欲は強くないこともあり、今は価値観がより精神的なものに移っています。今、僕の人生のプライオリティは心の幸せ。心の平穏が1番大切なことだと思います。世俗的な成功とは違うものを求めているんです。そしてループスの社員、お客様、関係する皆さまにも幸せになってほしい。
つらいときには、本当に多くの本を読みました。読書でつらさから回避していたと言っても良いかもしれない。東西を問わず、名著といわれるものは片っ端から。特に影響を受けたのは、『老子』、『菜根譚』、『7つの習慣』、『人を動かす』など。『般若心経』にもはまりました(笑)。山岡荘八の『徳川家康』(文庫全26巻)など3回も通読しています。名著ですね。読むたびに得られるものが違います。
僕は何ごとも徹底的にやる男です。だってほら、名前も“徹”ですから。名前って大事だと思います。生まれてからずっと、何回も書くでしょう。漢字の意味、親の思いが無意識に伝わってくる。いつの間にか、僕も名前の通り徹底的な男になりました。何事もチャレンジングにやってしまうダイナミックな人生を楽しんでいます。そもそも怖いとか不安に感じたりすることがあまりないんです。6人に1人の割合でリスクに対して疎い遺伝子を持っている人がいると何かで読んだことがあるんですけど、僕、絶対その1人です。
斉藤徹氏 プロフィール
株式会社ループス・コミュニケーションズ代表取締役
ソーシャルメディア事例の調査や、マーケティング活用の秘訣を提案する「In the looop」は、ITmedia オルタナティブ・ブログ年間アクセス1位の人気ブログ。ブログの他にも、Facebook、Twitter、Ustreamなどでソーシャルに情報発信&コミュニケートを行う、ソーシャルメディアの第一人者。
トレードマークは、Tシャツ(真冬でも)
オルタナティブ・ブロガーインタビュー『オルタナティブな生き方』バックナンバー、オルタナティブ・ブログIn the looop
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