Lyncが実現する“どこでもドア”:日本マイクロソフト品川オフィス探訪(後)(3/3 ページ)
マイクロソフト社員は社用のPC持ち出しや私用PCの社内持ちこみ、外部からの社内ネットワークアクセスなどを行える。しかし、会社の収益を脅かすような重大な情報漏えい事故が起きたことはないという。
コミュニケーションの効率化
人と人のコミュニケーションは、Exchangeによるメールシステムと、Lyncによるリアルタイム コミュニケーション システムの統合でサポートしています。外線電話もLyncに統合しているので、ネットワーク接続さえ確保できれば、どんな場所にいても内線、外線電話の発着信を行えます。
われわれはLyncによって、自分のオフィス環境における日常的なコミュニケーションをまるごと持ち運べるようになりました。
例えば隣に座っている人に何か質問をすることをイメージしてみてください。隣にいるからといって、唐突に質問したりはしないでしょう。まず相手の様子をうかがい、話しかけてよさそうかどうかを判断します。話しかけることを決断してからもいきなり本題には入らず、「いまちょっといい?」などコミュニケーション開始の許可を打診するでしょう。話が進み、新たな疑問や新しいアイデアが出て考えが深まり、それに自分が持っている情報が役立ちそうなとき、自分のPCの画面を相手に見せて、指で指しながら会話を進めていくのではないでしょうか。
Lyncがあれば、このような日常の会話を、離れた相手とでも対面同様スムーズに行うことができます。
まずプレゼンス機能で相手の大まかな状況を判断します。テキスト チャットを使えば、相手の集中を妨害することなくコミュニケーション開始の許可を得たり、そのまま会話を続けたりできます。話が深まってきたら、音声やビデオ映像を追加して直接会話したり、自分のPCの画面を共有して、相手に遠隔操作してもらいながら、同じ情報に基づいた確実なコミュニケーションを取ったり共同作業したりできます。つまりLyncがあると、「オフィス環境全体」を、いつでもどこでも持ち運べ、自分が今最も生産性を発揮できる場所を、自分で選べるようになるのです。
Lyncでの会話進行例 テキスト チャットの軽い打診から、同じ情報を確実に共有しながら深いディスカッションに移ることができるのが大きなポイント。開催時間をあらかじめ決めて参加者を招集する必要がある「Web会議ツール」では、決してこのようなことはできない
またLyncはWindows PhoneやiOS、Android に対応したLync Mobileを提供しているので、PCが利用できないシーン、例えば電車内やインターネット接続が確保できないような場所でも、通信キャリアの3G回線を利用してコミュニケーションを維持できます。これによって従業員は、社内外を問わずより気軽に移動できるようになります。
ただしスマートフォンはまだPCの補助的なツールとして使われています。現段階では、スマートフォンの画面は日常業務処理を行うには小さすぎますし、Wi-Fiが使えない環境ではコミュニケーション維持がせいぜいでしょう。しかし今後は、Lyncの次期バージョンや新たなWindows Phoneなどとあわせて、使い方が大きく変わっていくかもしれません。
さまざまなテクノロジーをご紹介しましたが、日本マイクロソフト社員のPC構成としては実は至ってシンプルです。
Windows 7の上に、Lyncを含むOfficeスイートが搭載されているPC、これですべての業務をカバーしています。もちろんマイクロソフト社員は常に自社製品の最新バージョンを使っていますが、技術的に飛びぬけて特殊なものばかりではなく、大多数の企業が何らかの形で採用しているものでもある程度代替可能なはずです。つまり多くの企業では、テレワーク実現にあたっての技術的な壁は決して高いものではないのです。あとは、何を実現したいのか、そのための本当の課題は何かを正しく考えるだけです。
とはいえ、テレワークを突き詰めた姿=誰も出社しないスタイルは本当に現実的なものなのか、不安に思う方も多いでしょう。次回は、3月19日に行った「テレワークの日」を振り返り、テレワーク成功の要件や問題点、今後の課題などを考えます。
関連記事
- 日本マイクロソフト品川オフィス探訪(前):フリーアドレス制が変えたワークスタイル
日本マイクロソフトが従来のパーテーションで囲まれた個室風のデスクからフリーアドレス制にオフィス環境を変更したところ、従業員の時間と場所の使い方に大きな変化が現れたという。 - 実録 日本マイクロソフトが無人になった日:そして誰もいなくなった
東日本大震災後の1週間、社員が全員在宅勤務であったにも関わらず、日本マイクロソフトは数々の復興支援プロジェクトを立ち上げた。彼らの活躍を支えたのは、日ごろから実践しているモバイルワークであった。 - 節電にも効果的なテレワーク普及の勘所
大震災をきっかけに、安全確保や節電効果が期待できるとして、テレワークが注目されている。そこで今回は、テレワーク普及の勘所について考えてみたい。 - 「節電目的でテレワークのシステムだけを導入してもBCPの効果は薄い」――田澤由利氏
新特集「テレワークは日本企業を強くする!」では、在宅勤務のあり方について企業や有識者の意見を伝えていく。第1回は、日本におけるテレワークの第一人者で、国のテレワーク施策にも提言している田澤由利氏だ。 - テレワーク市場は年率10%成長 2015年には1兆円規模に――IDC Japanが予測
スマートフォン市場の拡大や、震災による企業の意識の変化などにより、テレワーク関連ICT市場は今後大幅に成長するとIDC Japanが予測している。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.