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デザイン力を生かし1億人のファンを作る フェンリル田中克己の「ニッポンのIT企業」(2/2 ページ)

ブラウザに加え、スマートフォン向けアプリケーションの開発にも力を入れるフェンリル。それを支える強みが「デザインと技術」だ。

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ユーザーとのモバイルアプリ共同開発

 フェンリルには、ブラウザだけでなく、もう1つの事業の柱がある。スマートフォン向けアプリケーションの共同開発だ。「デザインと技術力の強みを発揮できる」(牧野CEO)とし、iPhoneが発売された2007年夏ごろから始めた。現在、総売り上げの半分を占める事業に成長したスマートフォン向けアプリケーションの共同開発は、スマートフォンの利用者がアプリケーションを使いやすくすることを最優先に、ユーザーと議論を重ねながら開発する。開発の手順はデザインから入り、その後に仕様を固める。なので、同社は受託開発ではなく、共同開発事業と呼ぶ。

 第1号の案件は、2008年のウェザーニューズの気象情報だ。2009年には、小学館の図艦NEO昆虫の「ニッポンのチョウ」を共同開発した。「単に紙と同じように見せるだけでは面白くないし、スマートフォンの利用者は買ってくれない」(牧野CEO)と提案し、ニッポンのチョウはワンタッチで実物大を表示するなど、紙にはない機能を取り入れたという。アプリケーションの課金に必要なサーバやコンテンツの管理、分析機能も用意している。

 スマートフォン向けアプリケーション開発は「これまで培ったデザインと技術力を提供するので、当社の単価は高い」(牧野CEO)。同社ホームページには、過去の一例として雑誌ビューアが250万円から、ストリーミングビューアが200万円から、検索アプリが250万円から、などと記載している。実際は開発期間2〜3カ月で、数百万円程度の案件が多く、プロジェクトマネジャーとデザイナー、プログラマーによる開発チームで取り組む。1人、2人の場合もあるという。

 そうしたアプリケーションを開発する優秀な人材確保が重要になる。牧野CEOによると、多くの技術者やデザイナーは自分の能力を高めたいと思っている。やりたいことをやりたいと思っている。新しい技術に挑戦したいと思っている。最高の開発環境が欲しいと思っている。「それらを実現できる会社と思われるようにする」(同)。


一期一会

 「1億人のブラウザファンを作りたい」。牧野CEOはユーザーではなく、ファンという言葉を使う。「ファンは厳しいことも言ってくれるが、愛してくれている。決して離れないし、当社商品を世の中に広めてくれる」。目下のところ1億への具体策はないというが、英語版と中国版を用意し海外展開を図る準備をしている。フリーソフトのブラウザは収益源を広告とするので、多くのファンを獲得が命になる。

 一方、スマートフォン向けアプリケーションの共同開発事業では、「日本一の開発力と言われたい」(牧野CEO)。ユーザーから「アプリケーション開発ならフェンリルに頼もう」となるために重要なのがブランドイメージだ。例えば、ユーザーからの問い合わせに、担当者が不在でもほかの社員が応えられるようにする。話し方も気を付ける。こうした営業対応に加えて、名詞や会社案内カタログの作成に気を配っている。「デザインを重視する会社」と言いながら、名詞や会社案内カタログが貧弱だったら、信頼されない。世の中にアピールする点を鮮明にすることは、中小IT企業が勝ち抜くための大きな武器になる。

「田中克己の『ニッポンのIT企業』」 連載の過去記事はこちらをチェック!


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