クラウド時代のデータベース管理に対する解:Oracle OpenWorld San Francisco 2012 Report
データベースの巨人、米Oracleがマーケットに投じた最新DB製品「Database 12c」は、管理コストをはじめとする企業課題を解決できると自信を見せる。
10月1日(現地時間)、米Oracleが開催する年次カンファレンス「Oracle OpenWorld San Francisco 2012」は2日目を迎えている。午前中のセッションでは、データベースサーバ技術担当 シニアバイスプレジデントのアンドリュー・メンデルソン氏がデータベース(DB)製品の最新版「Oracle Database 12c」のアウトラインを示した。
前日のラリー・エリソンCEOによる公式なアナウンスを受け、かねてから噂されていたOracle DBの新製品がそのベールを脱いだ。製品にある“C”の文字が示す通り、新製品はクラウド環境に最適なDB基盤である点を強調する。その背景にはクラウド需要の高まりが関係することは言うまでもない。ガートナーが2011年12月に実施した調査によると、プライベートクラウドを2014年までに活用するという回答が8割近くに上るなど、企業でのクラウドの機運はますます高まっている。
一方で、例えば、プライベートクラウドを構築する際のサーバ統合などにおいて、DBにまつわる課題が散見されていた。これまで企業システムの多くは、CRMやERPといった業務アプリケーションごとにDBがひもづいていたため、システムの増加に伴い、当然のようにDBの数が膨大となり、管理コストや導入コストが無視できない状況だった。そこで仮想化技術を用いてサーバを集約し、単一のサーバで複数のDBを稼働させることで改善を図ったが、新たに仮想サーバの管理が必要となった。また、既存のアプリケーションに変更を加えずにDBをこれまでのように機能させなくてはならなかった。
こうした課題に対してOracleが出した解が、マルチテナント方式のコンテナDBであるDatabase 12cだ。1つのコンテナDBに複数のプラガブル(プラグインを抜き差しできるようなものを指す)DBを収納できるため、ユーザーは個別にDBを管理する必要はなく、1台のコンテナを管理するだけで済む。バックアップやリカバリ、あるいはパッチ当てやアップグレードもコンテナ単位で実行するので、同時に複数のDBに対して処理できるのである。もちろん、個別のDBごとのリカバリも可能だという。
既存DBの移行も容易だ。最新バージョンのDBにアップグレードして、それを新たなコンテナにプラグインすれば一括管理できるようになる。「Database 12cの登場によってOracleのDBアーキテクチャが根本的に変わった。この技術を開発するために何年も費やしてきた」とメンデルソン氏は力強く話す。
管理の効率化に加えて、パフォーマンスも飛躍的に向上した。Oracleが行ったテスト検証によると、1台のサーバに50個のDBを実装して同じワークロード(負荷)をかけたところ、プラガブルDBでは3ギガバイトのメモリリソースしか使用しなかったが、DBを個別に構築したシステムは最大値に設定した20ギガバイトのメモリリソースを使い切ってしまった。結果的に、プラガブルDBは5倍のパフォーマンスとなる250個まで実装できたという。
Database 12cは、SaaSやPaaSといったパブリッククラウドの基盤としても有効だとメンデルソン氏。パブリッククラウド環境では、ユーザーごとに個別のコンテナを用意して分離することでセキュリティを確保するとともに、膨大なDBリソースを複数のユーザーで共有、割り当てできるようになる。初日のキーノートでエリソン氏が語ったように、これまでのSaaSベンダーはアプリケーションレイヤーでのマルチテナントを実現していたが、Database 12cではその幅をDBレイヤーまで広げたことで管理面などが強化され、クラウドサービス事業者のプラットフォーム基盤への導入が進むと見ている。
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