日本IBMは1月16日、記者およびアナリストに向けてソフトウェア事業の戦略説明会を開催した。同社 専務執行役員でソフトウェア事業担当のヴィヴェック・マハジャン氏は2013年の注力分野として、柔軟なIT基盤の実現、ビッグデータ活用によるビジネスの俊敏性、セキュリティ、パートナー強化という4つを掲げた。「IBMはエンタープライズIT市場におけるイノベーションをこれからも顧客に提供し続ける」とマハジャン氏は意気込んだ。
まず、IBMのIT基盤ソリューションとして中核となるのが、「IBM PureSystems」と「Mobile Enterprise」だ。Puresystemsは、昨年IBMが発表した「エキスパート・インテグレーテッド・システム」と銘打った新システム基盤で、サーバ、ストレージ、ネットワーク、仮想化、管理機能を統合した製品。システムの構築や運用にかかわるIBMおよびパートナーの知見を「パターン」として実装し、システム導入から稼働までの期間短縮や、運用の自動化によるコスト削減などを実現できるのが特徴である。マハジャン氏は「今年は、パターンと製品ラインアップを拡充し、データセンターや企業のプライベートクラウド基盤の標準にしていく。ユーザーはITインフラに膨大なコストを使うのではなく、イノベーションに投資できるようになる」と強調する。既に日本の製造業や流通・小売業など数社で導入されているという。
Mobile Enterpriseは、スマートデバイスのセキュリティやガバナンス管理を行うモバイル端末管理機能と、デバイスの導入から設定、運用サービスデスク、故障時の代替機運用に至るまでのライフサイクル支援を提供する。
2つ目のビジネスの俊敏性について、企業の俊敏性向上を支援するソリューションが、「Smarter Commerce」である。これはマーケティングや販売、サービス、購買、サプライチェーンといった企業の商取引における一連のプロセスを効率化するもの。約1年間のうちに企業買収したEC分析ソフトウェアのDemandTec、調達管理ソフトウェアのEmptoris、カスタマーエクスペリエンス分析ソフトウェアのtealeafの製品を、今年いよいよ日本でも本格展開していくという。
ビッグデータ分野においては、「Cognos」や「SPSS」をはじめとするビジネスアナリティクス(BA)関連ソリューションにとどまらず、パフォーマンス管理、ソフトウェア開発、セキュリティ、マーケティング、システム管理を含めて広範な領域にポートフォリオを拡張していく。
3つ目のセキュリティに関しては、「セキュリティ・インテリジェンス」をキーワードに挙げる。これは企業のITセキュリティとリスク管理に影響を与えるユーザーやアプリケーションなどから生成されるデータをリアルタイムに収集、分析し、改善策を図るというもので、具体的な製品として「IBM Security QRadar V7.1」を年初に出荷開始している。
最後のビジネスパートナーとの協業強化については、中堅・中小企業の顧客を支援すべく、パートナー担当営業を増員するとともに、全国にビジネスを拡大していく。「地方に新しい市場を作り、地方の顧客やパートナーのスキルアップを支援する」とマハジャン氏は説明する。パートナーの育成においては、IBM社員向けトレーニングプログラムを展開するなどして、ソフトウェアのフルラインアップを提供できる“ミニIBM”パートナーを育成していく。
これらの事業戦略を支える上で不可欠なIBMの武器が「技術力」である。先ごろ発表された2012年の米国特許取得件数において、IBMは6478件と、20年連続で米国特許取得件数トップとなった。「顧客がIBMに期待しているのは(スーパーコンピュータの)『Watson』をはじめとする先進的な技術力だ。決してコモディティではない。日本における研究開発を強化し、グローバルにおいてテクノロジーリーダーシップをとっていきたい」とマハジャン氏は力を込めた。
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