SDN(Software Defined Networking)は、米スタンフォード大学と米カリフォルニア大学バークレー校の共同プロジェクトで、ネットワークの柔軟性を飛躍的に高めることを目的に考案された新しいネットワークアーキテクチャの名称である。しばしば「ネットワークの仮想化」と表現されるが、SDNとは特定の技術を指すのではなく、方向性を示した言葉である。
SDNの利用効果は、(1)運用の自動化などによる保守運用費の削減、(2)新しいサービスのリードタイム短縮、(3)サービスの差異化、の3つだと言われている。このため、一般の企業ユーザーというよりは、通信事業者、データセンター事業者などサービスを提供する側からの利用が見込まれるアーキテクチャであると言える。
SDNで考慮されているアーキテクチャ上の主要な特徴としては、以下の3点が挙げられる。
(1)コントロールプレーン(ネットワークの経路制御など複雑な演算を行う階層)とデータプレーン(フレーム転送など、比較的単純な処理を行う階層)の分離
従来ネットワーク機器ごとに搭載されているコントロールプレーンとデータプレーンが分離され、データプレーンはハードウエアから切り離され標準化
(2)ネットワークの集中制御
コントロールプレーンは、ネットワーク上の任意の場所に置かれ、データプレーンを論理的に集中制御
(3)ネットワークの振る舞いをプログラミング
標準化されたAPIによりネットワーク制御をカスタマイズ
SDNの標準化に対する活動は複数の組織・団体により個別に行われている状況にあるが、非営利団体であるONF(Open Networking Foundation)内のArchitecture & Framework Working Groupがその中心を担っている。 OpenFlowは、SDNアーキテクチャを採用した、コントロール/データプレーン間のプロトコルの種類で、ONFにより現在標準化が進められている。
SDNのアーキテクチャを実装面から見ると、大きく3つの階層に分けることができる。一層目は、中心となるSDNコントローラ(仮称)とも呼ばれるデータプレーンから分離されたコントロールプレーンである。このコントロールプレーンが、ネットワークアプリケーション(経路制御、パケット転送ポリシー、仮想化、優先制御、負荷分散機能など)との間でAPIを介し、ネットワークの制御ソフトウェアとして機能するよう位置付けられている。
二層目は、このコントロールプレーンと上位システムに位置する配置・設定・管理を行うオーケストレータ等のビジネスアプリケーションと相互連携の層であり、このAPIはノースバウンドAPIと呼ばれる。
三層目がパケットの転送を行う物理ネットワーク機器および仮想スイッチで構成されるデータプレーンである。コントロールプレーンで定義された制御ポリシーを実行するためのインタフェースは、ベンダー独自プロトコルと標準化途上のOpenFlowなどに大別される。このデータプレーンとの間は、サウスバウンドAPIと呼ばれる。
参考文献
▼Software-Defined Networking: The New Norm for Networks, ONF White Paper APR13 2012
▼NFV and SDN: What’s the Difference? Pray Pate Mar. 30, 2013
▼SDN Activities in ONF, ETSI, ITEF Dr. Peer Hasselmeyer, NEC Europe Ltd. 2013
▼OpenFlow is Software Defined Networking, Software Defined Networking is not only OpenFlow Patrick Kerpan, CEO ChohensiveFT
▼Accenture Technology Vision 2013
執筆者
川上佳樹(かわかみ よしき)
アクセンチュア株式会社 テクノロジー コンサルティング本部
IT戦略 グループ ビジネス・デベロップメント・ディレクター
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