4万ものWebページをどうオープンデータ化するか
ただし、これらはあくまでも民間が主体となっている。「こうした機運の高まりを受け、横浜市としても積極的に取り組み始めつつある」と、横浜市 政策局 政策部 政策課 担当課長の大友康明氏は話す。既に昨年からオープンデータ流通推進コンソーシアムに自治体会員として参加するほか、電子行政オープンデータ実務者会議にも政策局担当理事が出席しているという。
さらに今年に入り、国のオープンデータ推進の基本的な考え方を理解し、横浜市としての取り組み状況を庁内で共有するための職員研修を3月、9月の2度にわたって実施したほか、横浜市CIO(最高情報責任者)が統括するIT化推進本部の個別課題検討部会として「オープンデータ推進プロジェクト」を設置した。同プロジェクトではワーキンググループを作り、横浜市が運営するポータルサイト構築などを議論しているという。
一方で課題もある。横浜市のWebサイトは現在14万ページにも上り、そのうち4万ページがオープンデータの対象となるものの、オープンデータとして外部に提供しているものは現状でほとんどなく、災害時の避難場所リストなど限られている。それはなぜか。理由として、データのガバナンスや利用ルール、著作権、個人情報保護など、オープンデータ活用に向けたさまざまな問題が山積していることに加え、データの形式などを整備するためのコストをどう予算化するかという検討も必要だからだ。特に前者の仕様については、政府との足並みをそろえていかなければならない面もある。
政府が発表するロードマップにおいては、2013年度は実証実験を進め、2015年度にオープンデータのための基盤構築と、ほかの先進国と同水準のオープンデータの公開を目指している。従って、横浜市のオープンデータ活用もこのスケジュール感に沿う形になるのではないかとしている。
オープンデータで観光客の利便性を高める
さて、オープンデータの利活用が進むことで、横浜市にどのようなメリットをもたらすのだろうか。大友氏は「観光産業の成長」をメリットの1つに挙げる。例えば、横浜を訪れた観光客が、交通機関の運行情報と文化施設情報、天候情報を組み合わせるなど、複合的なデータを必要なときにスマートフォンなどで利用できるようにすることで、より快適で便利な観光が可能になり、観光客の満足度を高められるのではないかという。
横浜といえば、日本では有数の観光都市であるイメージが強いが、海外から見ればまだ知名度は低いというのが実態だ。横浜市でもその課題を認識し、今年度末までに海外集客100万人を目指したプロモーションを展開するなど躍起になっている。「オープンデータによって観光客の利便性を高めることができるはず。オープンデータが横浜の経済活性化につながっていけばいい」と大友氏は意気込んだ。
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