大型プロジェクト成功に向け、ユーザーと対話繰り返す 大成建設・島田さん:情シスの横顔
大成建設の島田さんにとって、入社10年目に訪れた転機がエンドユーザーの立場でITシステムを考える大きなきっかけになったのだという。
企業のIT部門で活躍する方々を追ったインタービュー連載「情シスの横顔」のバックナンバー
1873年に大倉組商会として創業、戦後間もない1946年に現在の名称となった大成建設は、140年を超える歴史を持つ企業である。全国各地に支店を設けるほか、米国、台北、ドバイなど海外に7つの拠点を構えている。社員数は今年3月時点で約8000人に上る。
この大成建設に1995年に入社した社長室情報企画部の島田裕司さんは、入社してからずっとIT畑を歩んできた。最初に配属された情報システム部門でメインフレームの運用、管理を2年間経験した後、開発部門に異動してWebアプリケーションの構築などに携わった。2001年からは電子調達の仕組みを作るべく、そのプロジェクトに参画した。電子調達とは、主として専門工事会社との間で見積・契約・請求といった調達管理を行う仕組みのことだ。そのシステムを2003年に第一次リリースし、その後、二次、三次と発展させていった。
入社から10年間、東京本社に勤務していた島田さんに思いもよらない人事通達が来た。2005年から広島市にある中国支店に転勤し、現場の作業事務を任されることになったのだ。多少の戸惑いもあったというが、日々仕事をする中で、実は貴重な経験をしているということに気付く。それは「エンドユーザーの業務現場を知る」ということだ。
「現場の日常業務に接することで、ITシステムの使い手の気持ちがよく理解でき、忙しい中でITがどうあるべきかを考える契機となりました」と島田さんは振り返る。つまり、ITシステムの作り手としての思いだけが先走っては駄目で、エンドユーザーにとってそれが便利であるかどうかが大切なのだということを改めて学んだわけである。
そして2009年、再び東京本社に戻り、現在所属する情報企画部で執務に当たることとなった。
2万人が利用するグループウェア刷新プロジェクト
情報企画部は、大きく「企画室」と「推進室」の2つに分かれる。企画室の中には、ガバナンスを行う統制チーム、ICT調達チーム、企画チームがあり、島田さんは企画チームにいる。推進室の中には、コンサルティングチーム、ICTインフラ計画チームがあり、情報企画部全体で30人を超えるメンバーがいる。
大成建設では2001年から5年を1サイクルとする「ICT投資5カ年計画」に取り組んでおり、この策定を行っているのが企画チームだという。また、現在はこの次の計画(2016年〜2020年)についても検討しているそうだ。グループウェアの刷新は現在のICT投資5カ年計画の中核に位置付けられていたため、経営層の関心も高かった。
島田さんが情報企画部に移り、プロジェクトリーダーとして取り組んだ大きなプロジェクトが、社内ポータル/グループウェアの刷新だ。「グループウェアは全社員が使うシステムであるだけでなく、実に10年振りのリニューアルだったので、エンドユーザーへの事前周知や方針説明をしっかり行う必要がありました」と島田さんは話す。
そうした事前の説明会などにおいて重視したのは、システムのオペレーションではなく、なぜ新しいグループウェアを導入するのかという理念や考えをエンドユーザーに伝えることだった。丁寧に意思疎通を図るべく、東京本社では22部門を対象に計47回の説明会を開催し、支店についても13拠点を行脚して現場と対話した。
2012年7月にシステムの基本設計を開始した同プロジクトは、ちょうど1年後の2013年7月に新グループウェアの稼働に成功した。大成建設の社員およびスタッフ1万3000人が一気に利用を始めた。
その後、2014年4月から7月末までにグループ企業4社への展開を完了。現在は1万7000ユーザーが利用している。8月にはバージョンアップによる機能拡張を図り、今年度中にすべてのグループ企業への導入を終わらせる予定だ。総計で2万ユーザーという規模になる。
全体を俯瞰する目を持つ
プロジェクトリーダーとして、島田さんが心掛けていることは何か。メンバーに気を配り、ファシリテーターとしての役割を果たすことが大切だという。そして何度も対話をすること。例えば、グループウェア刷新プロジェクトでは、リリースまでにメンバーやパートナーどとの定例会を23回実施し、リリース後も引き続き行われている。
今後さらに優れたプロジェクトリーダーになるためには、多分野に目を向け、社内のほかのプロジェクトとも連携して仕事を進めていくことが肝要だと考える。「全体を俯瞰する目を養い、さまざまなプロジェクトを成功に導いていきたいです」と島田さんは力を込めた。
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