JALの「ターゲティング広告」を成功に導いたビッグデータ分析とは?:単価が高まる”ルール”を発見(3/3 ページ)
Web上で航空券の購入を検討しているユーザーのアクセスログを分析し、サービスの質と利益の向上に成功したJAL。IBMの年次カンファレンス「IBM Insight 2014」でその事例とデータ分析への思いを来場者に伝えていた。
博士号なんていらない、誰でもデータサイエンティストになれる
欧米でデータサイエンティストと言えば、博士号を持った分析のスペシャリストで、高給取り――そんなイメージがあると渋谷氏は話す。しかし、データ分析ツールが発展してきた今、むしろデータサイエンティストに求められるのは「ビジネス感覚」と「業務知識」だという。
「データ分析に必要なのは、ビジネス感覚、分析技術、そしてシステムに対する知識の3つです。もちろんこの3つを兼ね備えた人材がいればよいですが、そんな“スーパーマン”は普通いません。この中で最も大事なのはビジネス感覚。利益につながる施策を生むことがゴールだからです。“普通の会社”でデータサイエンティストを育てようと思うならば、マーケティング関係の人に分析ツールを通じて、統計の素養を身につけさせるのがいいでしょう」(渋谷氏)
もちろんデータ分析のプロにビジネス感覚と業務知識を身につけてもらうという方法もある。しかし、そのデータ分析のプロが日本にはあまりいないのが実情だ。であればマーケターを育てるほうが早く、より利益につながる施策を思いつきやすいというメリットもある。そのためにSPSS Modelerのような“とっつきやすい”データマイニングツールが重要な役割を果たすと渋谷氏は言う。
「統計の世界を極めようと思えば道は長い。山を登るようなものです。データ分析の重要性が叫ばれて以降、多くのマーケターが統計を勉強をしているようですが、実務で使えるのは山のてっぺんの部分です。それまでに挫折してしまう人も多いでしょう。データマイニングツールを使えば、山頂にヘリコプターで行くような感覚で実務で使える統計学を使えるようになります。博士号なんていりません。誰でもデータサイエンティストになれるのです」(渋谷氏)
Webの「1to1マーケティング」を現実世界でも
このようにデータ分析を通じて、顧客一人ひとりに合わせたサービスを進めてきた同社だが、今後は同様の取り組みをWeb上だけでなく現実世界でも展開していきたいという。渋谷氏は次のようにアピールした。
「当社は航空会社ですから、サービスはWebだけではありません。こうした1to1マーケティングをWeb上で始めた理由に、Webのほうが展開しやすいからというものがあります。現実世界ではここに人間のコミュニケーションが介在するので、また一段と難しくなるでしょう。現在は会員番号を聞いて、そのお客さまがどういった会員なのかを把握する程度で止まっています。しかしいずれは空港で、そして飛行機の中ででも同じようなアプローチのサービスを生み出していければと思っています」
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