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人材不足は“量”ではなく“質”が深刻――ITスキル標準はどこへ行く2015年問題の本質を探る(5)(4/4 ページ)

2015年問題はIT人材の量的不足ばかりが注目されているが、IT業界にとって深刻なのは、むしろ質的人材不足である。これを解消するために、ITスキル標準を活用した人材育成体系や仕組み作りが大手IT企業を中心に進んでいるが、そのITスキル標準自体の行く末に不安が出てきた。各IT企業はどうすればよいのだろうか。

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今後、IT企業はどうすべきなのか

 ITSSの行く末が案じられる中で、IT企業はどうすべきなのだろうか。ITSS導入済み企業と未導入の企業に分けて対策を考えてみよう。

 まずITSS導入している企業は、ITSSが今後改訂されていくことはあまり期待しない方がよいので、自社構築したITSSベースのIT人材育成体系と制度を改訂していく場合、国が定義する人材定義やIPAが提供するタスク、スキル定義を参考に改訂するか、作り直すことになる。いずれにしても、今まで以上にコストがかかるので十分な検討が必要である。

 コストがかけられないのであれば、当面、現状で凍結するしかない。自社用にカスタマイズしてあるので、環境が大きく変化しない限りは活用できる。

 一方、ITSSをまだ導入していない、つまりこれからIT人材育成体系を構築するのであれば、国が定義する人材定義やIPAが提供するタスク、スキル定義を参考に構築すればよい。ITSS導入における2つの目的のうちの1つである、IT人材育成体系の構築と仕組み作りは少なくとも達成できる。

 もう1つの目的である、業界における自社要員のスキルレベル把握ができるかどうかは疑問が残る。ITSSのような職種ごとに細かなレベル定義をしているものがないため、レベル判定が各社で異なる可能性が高いためである。

 業界における自社要員のスキルレベル把握は、情報処理技術者試験に頼らざるをえなくなるが、情報処理技術者試験では知識のみの判定となるため、ITSSで行っていたスキル(実務能力)の判定ができなくなるという弊害がある。各企業はIT人材の質的不足を解消するため、民間団体で設立される協議会が十分機能することを期待しつつも、ITSSにまつわるリスクを回避する対策を検討する必要があるのだ。

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