厚労省はなぜ今、派遣法を改正しようとしているのか?:「3年ルール」撤廃へ(1/4 ページ)
派遣社員の働き方が変わる――労働者派遣法を改正する動きがあるのをご存じだろうか。なぜ派遣法を改正するのか、改正が行われるとどういった影響があるのか。エンジニア派遣大手であるVSNの川崎健一郎社長に、改正法案のポイントを解説してもらった。
派遣の働き方が大きく変わるかもしれない――。労働者派遣法改正法案が、今国会で審議されていたのをご存じだろうか。条文内の誤記などの理由によって6月20日に廃案となったが、細かなミスが修正されて再度審議される可能性は高いという。
「派遣社員が正社員になりやすくなる」「IT業界の派遣社員は大打撃」「派遣事業者が撤退するかも?」
労働者派遣法(派遣法)の改正に関しては、さまざまな意見や推測が飛び交っており、注目度の高さがうかがえる。その一方で、改正法案のポイントや派遣法そのもののシステムが分かりにくいことも、こうした推測が増える一因といえる。
派遣法が改正されると、派遣社員の働き方はどのように変わるのか? 派遣社員を受け入れる会社への影響はあるのか。そもそも、なぜ派遣法を改正するのか……。今回はエンジニア派遣大手、VSNの代表取締役社長を務める川崎健一郎氏に、改正法案のポイントや、現行の派遣法との違いを解説してもらった。
今、派遣法が改正される理由
――労働者派遣法の改正法案が国会で審議され、注目を集めています。法案の改正で何が変わるのかを解説していただきたいのですが、そもそも、なぜこうした法改正が行われるのでしょうか?
川崎: いわゆる「労働者派遣法」は1985年に制定されましたが、労働者派遣という業態はこの法律が制定される前から存在していました。元来、労働者派遣法は派遣労働を制限するために作られた法律であり、(国の考え方は)「派遣は労働力の需給を一時的に調整するシステムで、本来は正社員雇用が望ましい」というのが基本方針です。
労働者派遣法は一般的な法律に比べて、改正する回数が非常に多いです。これは、人の働き方の変化――つまり、働き方の“実態”に法律を合わせる形で改正が行われているから。そのため、法律の内容がややこしく、というか分かりづらくなっているのは確かですね。
今回の改正は、働き方の多様化に合わせつつも、ややこしくなりつつある内容をシンプルにまとめるとともに、安定した雇用形態を促進するという狙いが見て取れます。条文のミスなどにより6月に廃案となりましたが、早ければ秋に行われる臨時国会で再審議される可能性は高いです。
――なるほど。それではまず、現行の派遣法について教えてください。
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