「Googleスプレッドシートでは限界」――旅ベンチャーも困った交通費精算
「どこにもない旅を、みんなでつくる」をキャッチフレーズとするtrippeice。従業員数21人のベンチャー企業が選んだ交通費精算術とは?
「こんな旅をしたいな」――誰でもそんな思いを1度くらいは抱くことがあるだろう。「トリッピース」は、既存の旅行会社が企画しないような「旅」を募り、賛同者を集め、大手旅行社とともに企画化する。運営するのはサービスと同名のtrippiece、従業員21人のベンチャー企業だ。
旅行キュレーションメディア「RETRIP」や観光マーケティング事業も請け負う同社は、経費精算をクラウド化して2カ月が過ぎたところ。ベンチャー企業にとって、バックオフィス業務にはどのような課題があり、それをどのように解決したのか?
もともと「クラウド」を活用していたものの……
旅をキーワードにさまざまな場所でイベントを開催する同社。その都度、旅費交通費や出張費、現場での諸経費などが発生し、それを一時的に社員が立て替えている。ここまでは一般的な企業と何ら遜色ないだろう。
社員としては経費精算がキチンと行われ、立て替え分を回収できるかどうかは重要だ。それもできるだけ簡単に作業できるほうがいい。総務経理作業も担当する吉田祐輔氏(執行役員 コーポレート部長)にとっても、それは無視できない課題だった。
これまで同社では、Google スプレッドシートで作った経費精算のためのテンプレートを社員に配布。各自が記入したものを集めて定期的に処理していたという。Googleのクラウドサービスを活用する点はベンチャー企業らしいともいえるが、このやり方ではExcelを使ったやり方と同じ問題が発生する。
「フォーマットを変更してもそれが浸透せず、昔のままのシートで提出する社員が出てきます。すると記入項目にズレが生じてしまいますので、データの集計に二度手間が発生していました」(吉田氏)
一方、このやり方には社員側にも不満があった。イベント運営に携わり、細かな経費利用が多いというコミュニティーマネージャーの堀真菜実氏は「スプレッドシートに入力したあと、その経費が本当に処理されているか、申請状況が見えないのが不満でした」と振り返る。
シンプルで「自分が楽になる」ツールを探した
できるだけ効率よく、処理する側も申請する側も便利になるツールはないか? そうしてたどり着いたのがクラウドキャストの「Staple(ステイプル)」のチーム版だった。これは、経費精算に特化したクラウドサービスだ。
経費の入力はスマホから行い、添付すべき領収書があればカメラで撮影することも可能だ。データはクラウドに送信され、経費リポートの参照や追跡はWebブラウザで行う。チーム版では管理者による承認や却下、入力漏れなどの指摘ができる。
trippieceでは、ほとんどの社員がiPhoneなどのiOS端末を使っている。経費精算のための専用アプリ導入に研修やマニュアルの配布が不要だった。堀氏も「アプリはシンプルで項目も分かりやすい」と好感触を抱いている。特に外出先からでも経費精算処理が行えるようになったことは大きな変化だった。「立て替え処理が多かったので、忘れないうちに申請できるのは本当に便利です。申請がどこまで通っているのかも明確になり、安心感があります」
一方、吉田氏も「やりたかったことが過不足なくできます。”シンプル”さを実現することは難しいと思いますが、ユーザーインタフェースや操作感に満足しています」と評価する。何よりもスプレッドシートとの大きな差は「進化」だという。
「スプレッドシートはスプレッドシートでしかありません。経費精算に特化したクラウドサービスであれば、さらなる機能追加が期待できます。例えば、電車の経路と交通費とを連動させる機能が追加されました。外出が多い社員にとって、少ないステップで申請が完了することはいいことです。管理者側の機能でも『楽になった』と実感しています」
アーリーアダプターとしてのリスクとメリットは?
試用から導入決断に至るまでに必要だった期間は1〜2週間程度。サービスの継続提供への懸念はあるものの、「経費精算処理はスイッチングコストが低い」との理由から割り切っている。むしろ重視したのは、サービスの質や作り込み度合いなど、「開発者がこだわって作っているサービスかどうか」だったそうだ。
吉田氏にとって、バックオフィスの業務は「無駄をなくし、面倒なことをしないこと」が重要だという。社長の経費精算も代わりにやっているという同氏。「そろそろ社長本人に作業を押し戻してもいいかも」と笑う。それが新しい経費精算システムへの、吉田氏なりの評価なのかもしれない。
関連記事
- スマホで交通系ICカードを読み取る「Stapleリーダー」
クラウド型経費精算サービス「Staple」がバージョンアップ。交通系ICカードの読み取り機能や連携する会計ソフト数を増やした。 - 経費管理クラウド×フルアウトソーシングで間接費削減は可能か?
SaaS型の経費管理サービスを提供するコンカーとNTTデータスマートソーシングが業務提携。今後3年間で従業員数1000人以上の大企業100社にBPOサービスの提供を目指す。 - 中日ドラゴンズ、請求業務をクラウド化
社内システムのクラウド化に向けて、請求業務に「Misoca」を採用。バックオフィスの運用負荷を下げ、ファンサービスにリソースを振り当てる。 - ユニクロ、クラウド型経費精算サービスのコンカーを全面導入へ
ユニクロをはじめとするブランドで全世界に約2800店舗を展開するファーストリテイリング。グローバル経営を支える経費管理基盤としてコンカーを採用する。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.