“領収書の手貼り”をやめれば「年6000億円のコスト削減」 改正e文書法のインパクト(1/2 ページ)
領収書を“のりで貼って提出する”手間や、原本保管のコストがなくなれば、日本全体で6000億円のコスト削減になる――。こう話すのはコンカー取締役の三村真宗氏。e文書法のさらなる改正で、それが実現する日も遠くないようだ。
スマートデバイスを使った業務効率化が進む中、いつまでたっても“のり付けして提出”という面倒なアナログ作業がついて回るのが“経費精算”だ。2005年のe文書法施行でデジタル化が可能になってはいるものの、さまざまな規制に阻まれて導入企業が少ないのが現状だ。
そんな状況が今秋のe文書法改正で変わろうとしている。今回のe文書法の改正は、企業にどんなメリットをもたらすのか。残された課題が解決するめどは立っているのか。クラウド型経費精算サービス大手のコンカーで代表取締役社長を務める三村真宗氏が説明した。
2015年、e文書法改正で普及に弾み
e文書法はそもそも、領収書や契約書などの証憑をデジタルデータで保存できるようにして、貼り付け作業の手間や、保管にかかるコストを低減しようという目的で生まれた法律だ。しかし、導入に向けたハードルが高く、実施している企業は少ないのが現状だ。
普及が進まない理由の1つが、「3万円以上の証憑は原本を保存しなければならない」という規制だ。この規制があると業務の現場では、3万円以上の証憑は従来のように紙の原本をのり付けして保管し、それ以外の証憑はデジタル化して原本を処分する――というように作業フローが煩雑化してしまう。
2つ目は、デジタル化したデータに電子署名とタイムスタンプを付与するための仕組み作りだ。偽造を防ぐため、いつ、だれがデジタル化したかが分かるようにするためのルールだが、証憑をe文書法に則った形でデジタル化するには、電子署名法で定められた認定業者の電子証明書とタイムスタンプを付加する必要がある。企業が対応するためには、自社のシステムにその仕組みを組み込まなければならない。
3つ目がスキャナの仕様だ。現状では証憑をデジタル化するためのスキャナは「原稿台付のスキャナ」が必須となっており、タブレットやスマートフォンのカメラで撮影した画像では、e文書法の条件を満たせない。
こうした“普及を阻む規制”のうち、今秋の改正が決まっているのが、3万円以上の証憑の原本保存と、デジタルデータへの電子証明書の付与だ。
関連記事
- 今の業務システム、そのまま“e文書法対応”に PFUがソリューション提供へ
大幅なコスト削減効果が期待できるe文書法対応を支援。タイムスタンプ対応やスキャンデータのファイリング、既存システムとの連携など、e文書法に対応するために必要な機能をパッケージで提供する。 - コニカミノルタに“億単位の商談”をもたらした名刺活用術
社内の“眠れるお宝”を掘り起こして売上アップにつなげる――。そんな取り組みを成功させたのがコニカミノルタ ビジネスソリューションズだ。名刺のデジタル化と共有を徹底し、人脈を可視化することで“攻めの営業”に転じ、億単位の商談を掘り起こした。 - ムダの可視化とこまめな節電で大幅コストカットも 中小企業向けの「節電コンシェルジュ」
大がかりな機材を導入することなく、電力ムダ使いの“見える化”と節電の“ルール化”で電力コスト削減へ――。キヤノンマーケティングジャパンが、中小企業向けの節電支援サービスを提供する。 - PFU、スキャナに“e-文書法最適化”モード 面倒な設定が不要に
20機種に、面倒な設定の手間なくe-文書法に最適化したスキャンを行える仕組みを実装する。 - 文書の電子化に踏み切る前に、知っておきたい電子文書の特性
「e文書法ガイドライン」と呼ばれる報告書を基にして、行間を意識しながら文書の電子化に求められる必要条件を見てこう。「e文書法対応システム」というベンダーの売り文句にだまされないための論理武装に役立つはずだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.