第4回 「マイナンバーを持たない」という選択肢を考える:税理士目線で提案する「中小企業のマイナンバー対策」(2/2 ページ)
マイナンバー制度は全ての企業、さらにその委託先──例えば税理士の業務にも深く関係する。中小企業のマイナンバー対応は「税理士への委託を考慮した対策」が必要だ。4回目は「マイナンバーを持たない」という選択肢について考察する。
「マイナンバーを持たない」という選択肢を考える
前回から、マイナンバーの収集、保管、利用、提出というフローに沿って、中小企業および中小企業から委託を受けて個人番号を取り扱う税理士事務所のマイナンバー対応で何をしなければならないか、その具体的な内容を説明してきました。
以上の内容は、現在多くの税理士事務所が利用しているコンピュータシステムがオンプレミス型(事務所内にある)システムであることを前提にしています。そのために「マイナンバーを守る」ためにどうするか、が課題設定になってしまいます。
ここで、「マイナンバーを持たない」という選択肢を考えてみましょう。
具体的に、中小企業でも税理士事務所でも「マイナンバーを持たない」ようにするには、クラウドコンピューティングを活用したサービスの利用が考えられます。すでに「(自社では)マイナンバーを持たずに済む」ことをアピールするクラウドサービスも登場し始めています。
例えば、マイナンバーを持たないで済むサービスを利用する。個人番号を含む特定個人情報ファイルをダウンロードして事務所内に保管することをしなければ、先に挙げた「管理区域」に対する物理的安全管理措置は必要がなくなります。
それだけでも、税理士事務所の負担は軽減されます。ですが、できれば収集・保管・利用・提出というマイナンバーの利用プロセスで、中小企業と税理士事務所の連携がスムーズに行われ、かつ、プロセス全体を通して負荷を負うことなく安全管理が徹底できる、漏えいリスクをとことん軽減できる、そのようなクラウドサービスを選択したいものです。
そのための要件は、以下のようなものになります。
- 中小企業で従業員からの個人番号収集時、従業員本人または中小企業の事務取扱担当者または責任者が個人番号を入力すれば、税理士事務所の年末調整データの個人情報とひも付けて、クラウド上のデータベースに保管されること
- 中小企業で入力された個人番号データは税理士事務所と共有ができること
- 入力された個人番号データは高いセキュリティ対策が施されたデータセンターで保管されていること
- アクセス制御により、権限がない事務所の所員が年末調整業務を行う場合は画面等に個人番号が表示されないように制御されていること。逆に言えば、権限のない事務所所員でも、これまで同様に個人番号を意識せずに年末調整の業務が行えること
- 源泉徴収票など法定調書の電子申請時に、源泉徴収票などの電子データに個人番号が正しく組み込まれ、送信できること
- 個人番号の入力・編集および源泉徴収票などでの利用、そして削除などの記録が確認できること
中小企業が個人番号の取り扱いを税理士事務所に委託し、年末調整業務を行う場合の理想形は、以上の要件を満たすクラウドサービスを選択することです。
(続く)
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