第5回 見落としがちな「マイナンバー記載時期」と「例外・注意点」:税理士目線で提案する「中小企業のマイナンバー対策」(1/3 ページ)
中小企業のマイナンバー対応は「士業への委託を考慮した対策」が必要。5回目は「税務関係番号記載への記載時期」と「例外や注意点」、中小企業や税理士に向けたサービス選定のポイントを解説する。
講師:中尾健一(なかお・けんいち)氏
アカウンティング・サース・ジャパン株式会社 取締役。1982年日本デジタル研究所(JDL)入社。日本の会計事務所のコンピュータ化を30年以上に渡りソフトウェア企画面から支えてきた。2009年、税理士向けクラウド税務・会計・給与システムを企画・開発・運営するアカウンティング・サース・ジャパンに創業メンバーとして参画、取締役に就任。2015年4月に発足したクラウドマイナンバー事業における「マイナンバーエバンジェリスト」として、中小企業の財務を担う税理士の視点から、マイナンバー制度が中小企業に与える影響を解説する。
『税理士目線で提案する「中小企業のマイナンバー対策」』ではここまで、
- マイナンバーはすべての中小企業に影響すること
- 年末調整や社会保険関係の業務を税理士や社会保険労務士に委託しているのであれば、中小企業のマイナンバー対応は税理士や社会保険労務士との連携が重要であること
- 年末調整業務に的をしぼった税理士との連携で、マイナンバーの収集・保管・利用・提出というプロセスを経ること
の観点でどのように対応すればよいかを説明してきました。
今回はまとめとして、税務関係書類への番号掲載時期を確認するとともに、これまで触れらていなかった注意点をいくつか挙げていきましょう。
税務関係書類は、いつからマイナンバーを記載するのか
2016年(平成28年)1月から税や社会保障の分野でマイナンバー制度が始まります。図1は国税庁が公表している「税務関係書類への番号記載時期」です。個人番号の記載が必要となる主な税務関係書類となる所得税や源泉所得税(図1では法定調書の項)は、一般的な場合で2016年分(平成28年分)からとなっています。
もう少し説明しましょう。
所得税(個人事業主などが関係します)
一般的な場合では、2017年(平成29年)2月16日から同年3月15日までに提出する所得税確定申告書から、個人番号の記載が必要になります。
もし2016年(平成28年)の途中で事業主が亡くなった場合はどうするか。死亡したことを知った日の翌日から4カ月以内に申告書を提出する(相続人が準確定申告を行う)必要がありますが、この場合は死亡した人の個人番号の記載は必要ないとされています。
しかし、死亡した人の親族など相続人にあたる人については注意が必要です。準確定申告の付表が2016年(平成28年)には変更され、これに個人番号の記載が求められるようになる予定です。
源泉徴収票など法定調書(すべての事業者が関係します)
2017年(平成29年)1月31日までに提出する源泉徴収票などの法定調書から、個人番号の記載が必要になります。
ただし2016年(平成28年)中に個人番号の記載が必要となる場合もあります。「配当、剰余金の分配及び基金利息の支払調書」(支払いが確定した日から1カ月以内)、「退職所得の源泉徴収票」(退職の日から1カ月以内)があります。
そのほかの申請書・届出書などは、2016年(平成28年)中に提出するものからとされています。個人事業主関連の「個人事業の開業・廃業等届出書」などの申請・届出関係の書類には個人番号の記載が必要となります。税理士事務所では、所得税に関する業務を受ける個人事業主について、扶養親族なども含めた個人番号の収集をあらかじめしておく必要があります。
まとめると、この連載で主に取り上げてきた年末調整は、一般的に2016年末(平成28年末)の年末調整から。個人番号を記載した源泉徴収票などの提出は2017年(平成29年)の1月ということになります。
しかし上記の通り、退職者があり、退職金を支払うケースでは「マイナンバーを入れた退職所得の源泉徴収票」がすぐ必要となります。やはり2016年(平成27年)中に自社従業員などからの個人番号の収集は済ませておきたいものです。
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