企業規模の違いで情報格差を生まないか──ビッグデータ活用の現状と課題:Weekly Memo(1/2 ページ)
今後の企業の競争力を大きく左右するといわれるビッグデータの活用。一方で、その度合いが企業規模によって大きく異なれば、新たな“情報格差”を生むかもしれない。
情報通信白書にみる「企業のビッグデータ活用状況」
企業におけるビッグデータ活用は、いわゆるヒト・モノ・カネのリソースを持つ大手だけがどんどん進み、それに乏しい中小は取り残されて、まさしく企業規模によって新たな“情報格差”を生むのではないか──。これは筆者がこれまでビッグデータ分野を取材してきて感じている素朴な疑問である。
本コラムで、企業におけるビッグデータ活用の現状について取り上げる機会があれば、ぜひこの疑問について考えてみたいと思っていたところ、まずはその現状を知る格好のレポートがこのほど公表されたので、今回はこの話題にお付き合いいただきたい。
格好の現状レポートとは、総務省が先頃公表した「平成27年度版情報通信白書」(関連リンク参照)のことである。膨大な資料だが、ICT分野全体の現状を知るには打ってつけだ。平成27年度版では、IoT(Internet of Things)およびビッグデータ活用の進展について記された項目(第5章第4節:ICT化の進展がもたらす経済構造の変化)がPDF版で30ページ以上にわたっており、なかなか読み応えがある。
ここではその中の「企業等におけるビッグデータの活用状況」の項目から、総務省が行ったアンケート調査結果に基づく5つの図を取り上げて現状リポートとしたい。
まず、図1はデータの活用目的を8種類に分類し、それぞれに活用例を示したものだ。図2は、それを産業別にみたものである。全体として「経営管理」(47.6%)が最も多く、「業務の効率化」(46.9%)、「商品・サービスの品質向上」(42.9%)、「顧客や市場の調査・分析」(40.5%)までが40%を超える結果となった。産業別では、「商業」や「不動産業」において「商品・サービスの品質向上」「業務の効率化」など複数の目的が50%を超えており、他の産業に比べてデータの活用が進んでいると推察している。
図3は、どのような領域でデータ活用を行っているかを産業別に示したものだ。調査では、データ活用領域を「経営全般」「企画、開発、マーケティング」「生産、製造」「物流、在庫管理」「保守、メンテナンス」の5つに設定し、それぞれについて集計。その結果、全体の傾向として「経営全般」「企画、開発、マーケティング」でのデータ活用の割合が高くなっており、とくに「経営全般」においては全体の78.8%がデータを活用している。
産業別では、「商業」「金融・保険業」「不動産業」において「経営全般」での活用割合が6割以上と他の産業に比べてやや高く、「企画、開発、マーケティング」の活用割合においては、上記3産業に加えて「情報通信業」が5割程度と他産業に比べやや高い状況となった。
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