企業規模の違いで情報格差を生まないか──ビッグデータ活用の現状と課題:Weekly Memo(2/2 ページ)
今後の企業の競争力を大きく左右するといわれるビッグデータの活用。一方で、その度合いが企業規模によって大きく異なれば、新たな“情報格差”を生むかもしれない。
ビッグデータ活用に向けたエコシステムづくりを
また、総務省の調査では分析結果の活用方法について、「見える化」「予測」「自動化」の3つに分類していた。図4はそれを産業別に示したもので、全体の傾向として「見える化」(59.2%)、「予測」(40.8%)、「自動化」(6.9%)の順に割合が高くなっている。このことから、まず「見える化」によって現状を把握することから始め、把握できたものに対しては今後の動向などを「予測」し、最終的には一連の動作を「自動化」するといった大きな流れがあるのではないかと推察している。産業別では、活用割合として「見える化」は「金融・保険業」(70.6%)、「予測」は「電力・ガス・水道業」(48.1%)、「自動化」は「金融・保険業」(9.9%)がそれぞれ最も高くなっている。
図5は、5つの領域においてデータ活用の効果があった割合を産業別に示したものである。「経営全般」では全体のおよそ3割、「企画、開発、マーケティング」ではおよそ2割、「生産、製造」「物流、在庫管理」「保守、メンテナンス」ではおよそ1割がデータを活用し、効果を得ているという結果となった。
白書ではこの項目の最後に「企業が生み出す付加価値の源泉は、データの取得・分析を通じたソリューションの提供にシフトし、その意味で、あらゆる産業が広い意味でのICTソリューション産業と評価される時代が来るかもしれない」との予見を示している。
以上が、白書から抜粋した企業におけるビッグデータ活用の現状レポートだが、残念ながら冒頭に述べた筆者の疑問が解消するような内容は見あたらなかった。産業別の観点では大いに参考になるが、果たして企業規模の違いで情報格差が生まれることはないのか。
これまでもビッグデータ分野の取材の折りに、ユーザー企業やベンダーの複数のキーパーソンに尋ねているが、「確かに情報格差は生まれるかもしれない」とのコメントが大半だった。そうした中で、ICT業界のご意見番であるインターネットイニシアティブ(IIJ)の鈴木幸一会長兼CEOがこう答えてくれた。
「ビッグデータ自体はICTの進化でこれからもっと集めやすくなる。問題はそれを生かす知恵で、その点については企業規模に関係ない。むしろ、スタートアップ企業のほうが自由な発想でそうした知恵を生み出せるのではないか」
規模にかかわらず、企業はそうした気概を持つべし、とのメッセージである。
とはいえ、企業規模の違いで大きな情報格差を生まないように、ビッグデータ活用を中心に据えたエコシステムづくりを積極的に行うなど、ICT業界として取り組むべき施策もあるのではないかと考える。このテーマは引き続き、こだわって注目しておきたい。
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