人工知能で肥満解消? 社会問題を解決する「シェフ・ワトソン」(2/2 ページ)
シェフ・ワトソンの開発に参画していたイリノイ大学准教授、ラブ・ヴァーシュニー氏がシェフ・ワトソンの持つ可能性について講演を行った。
シェフ・ワトソンが社会問題を解決する
そんなシェフ・ワトソンが新たに挑戦しているのが、食品廃棄などの環境問題や健康問題の解決だ。
いま、世界で食糧不足が問題となっているが、その一方で、生産される食品のうち、約1兆ドル分が消費されずに捨てられていることも問題視されている。その理由の1つに挙げられているのが、「食材をどう料理したらいいのか分からない」「せっかく買った食材を有効活用できずに余らせ、捨ててしまう」といった消費者の行動だ。食材を有効活用するシェフ・ワトソンなら、こうした食品問題を解決できるという。
また、シェフ・ワトソンが、栄養と味のバランスがよいレシピを提案することで、廃棄食品の量も減らせるという。「例えば、米国の学校給食は栄養バランスは良いのだが、おいしくないため、捨てられる量が多い。シェフ・ワトソンを使い、おいしくて栄養がある料理を作ることで廃棄量を減らすことができる」(ラブ氏)
さらに、肥満解消にも役立つ。米国では成人の3分の1にあたる7860万人が肥満であり、深刻な社会問題となっている。シェフ・ワトソンが、低カロリーで栄養があるおいしい料理のレシピを提案すれば、肥満の予防にもつながる。
このように、最適な食材の組み合わせを人工知能が考えることで、さまざまな社会問題が解決できるというのが、ラブ氏の考えだ。同氏によれば、人工知能が創造性を発揮する上で重要なのは、数多くあるさまざまな組み合わせの中からベストの組み合わせを選ぶ能力だという。
「今までの人工知能は、さまざまなアイデアを出すことができたが、その中でどれが一番良いかを選ぶことができなかった。今はそこまでできるのです」(ラブ氏)
私たちが、これまで考えも及ばなかった方向に進むことができるのは、人とシェフ・ワトソンのコラボレーションのたまものだとラブ氏は話す。
「人間はつい、いつもの行動パターンを繰り返してしまいがちだが、シェフ・ワトソンは人間が気付かないような新しいもの、新しい気付きを与えてくれるのです」(ラブ氏)
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