クラウド事業好調、「SAPは“どうでもよくなった"」 ラリー・エリソンCTO:Oracle OpenWorld 2015 Report(2/2 ページ)
IT企業のカンファレンスで世界有数の規模を誇る「Oracle OpenWorld」が今年もサンフランシスコで開幕した。マーク・ハードCEO、ラリー・エリソン会長兼CTOがオープニング基調講演にさっそく登場した。
SAPはクラウドではあまり聞かない IBMもどうでもよくなった
「これまでIBMとSAPがライバルだった。クラウドの時代になると、存在感がなくなった。もうどうでもよくなった」(エリソンCTO)
初日の夕方に行われたオープニングキーノートで、Oracle CEOのマーク・ハード氏の挨拶、米Intel CEOのブライアン・グルザニッチCEOによるパートナー講演に続き、Oracleのラリー・エリソン経営執行役会長兼CTO(最高技術責任者)が登壇し、おなじみの少し過激な発言で会場を沸かせた。約1年前、CEOの座から退いて現職に着任した同氏は、昨年のOpenWorldで意欲を見せ、「No.1クラウドカンパニー」に向けたクラウド事業の拡大と認知が、2015年現在、着実に実を結んでいる状況を説明した。
2015年度第4四半期のSaaSとPaaSビジネスの売上高は4億2600万ドル(約514億円)。売上高約4.5兆円規模の同社にとって、クラウド事業は同社売上の年間5〜8%を占めるに過ぎないかもしれないが、対前年同期比で売上200%増、顧客も2014年10月の87社から、2259社(2015年10月末時点)まで増やした。
Oracle Databaseもそうだが、ERP(統合業務システム)、HCM(人材・タレントマネジメント)、SFA(営業支援システム)、SCM(サプライチェーン管理)といったSaaSレイヤーのビジネスアプリケーションにおいて、売上の7割がこれまでオラクルユーザーでなかった、中小規模の新たな顧客だという。そして、SaaSベンダーとしては、OracleはSelasforce.comに次ぐ第2位の地位にすでにある。
SaaSビジネスをドライブさせるには、PaaSが、つまりプラットフォームが必要。そしてインフラストラクチャであるIaaSも必要ということになる。この3レイヤーと、データベースも、プログラム言語も提供する会社はMicrosoftくらいしかないとエリソン氏。そして「競合はSalesforce.comとWorkdayに変わった。これらに対するOracle Cloudの強みは、プラットフォームを持っているか否か。オープンスタンダードのプラットフォームでなければうまくいかない」と優位性を語る。
例えば、現行のOracle Databaseである「12c」は、クラウド対応を想定したマルチテナントアーキテクチャーを特徴とする。Oracle Cloudではすべてのアプリケーションのモバイル化やソーシャルメディア対応などが可能であり、Oracle Cloud上のあらゆるアプリケーションはプログラムコードを書き換えることなく、ボタンを押すだけでオンプレミスからクラウド、そしてクラウドからオンプレミスへ行き来できる。
「Oracleのプラットフォームで作ったアプリは、クラウドでも、オンプレでも、他社クラウドでも使える。対してSalesorceのプラットフォームでは、そこでしか使えない(ベンダーロックインがある)」(エリソン氏)
IaaSについても、Amazon Web Services(AWS)より低価格、少なくとも同等を目指し、技術の優位性を訴える。
そのほか、講演の最後には、「Database In Memory Accelaration」、SaaSレイヤーにおけるSCM/PLMカテゴリの1つ「Manufacturing(製造業向け) Cloud」、同じくCXカテゴリの「E-Commmerce(eコマース) Cloud」、SaaSアプリケーションのマッシュアップを簡単にする「Easy to Extend SaaS Applications」、統一したコンシューマー機器のような「新モバイル機器向けの統一UI」、「Integrated Just-in-Time Learning System」、「Multitenant Database Cloud Scalability」、「Database In-Memory Acceraration」、「Database In-Memory On Active Data Guard」、「Exadata Cloud Service」、「Exadata In-Memory & In-Flash Database」、「Multitenant Java Server」、「Fault-Tolerant Java Server」、「Big Data Preparation, Discovery, Visualization Cloud Service」などが矢継ぎ早に発表された。これらの詳細についてはカンファレンス2日目以降で紹介される予定だ。
実はエリソンCTOの基調講演は、予定時間を約30分も超えた長丁場となり、最後の新サービスの発表が駆け足でサクッと終わってしまった。3日目の基調講演で“話す予定”のSaaSレイヤーの部分を予定外に多くしゃべりすぎてしまい、時間内に収まりきらなかったようだ。それだけクラウドについては「言っておかねばならない」ことがたくさんあるわけだ。
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