第10回 マイナンバー対応の近道は「税理士に相談」:税理士目線で提案する「中小企業のマイナンバー対策」(1/3 ページ)
中小企業のマイナンバー対応は「士業への委託と連携+できるだけ持たないを考えた実務」がキモになる。10回目は「“持たずに管理する”クラウドサービスの活用シーンとその相談相手」について解説する。
講師:中尾健一(なかお・けんいち)氏
アカウンティング・サース・ジャパン株式会社 取締役。1982年日本デジタル研究所(JDL)入社。日本の会計事務所のコンピュータ化を30年以上に渡りソフトウェア企画面から支えてきた。2009年、税理士向けクラウド税務・会計・給与システムを企画・開発・運営するアカウンティング・サース・ジャパンに創業メンバーとして参画、取締役に就任。2015年4月に発足したクラウドマイナンバー事業における「マイナンバーエバンジェリスト」として、中小企業の財務を担う税理士の視点から、マイナンバー制度が中小企業に与える影響を解説する。
「持たずに管理」「持たずに申告」できるクラウドマイナンバー管理システムとは
前回は、収集しなければならないマイナンバーを効率的に集め、そして保管から利用・提出と全体を通した運用において、「マイナンバーを持たないで運用する」クラウド型システムの活用シーンを考えてみました。
大手のITベンダーが提供するマイナンバー管理システムやソリューションは、クラウド基盤を用いたシステムが多くを占めています。中小企業や小規模事業者としては、マイナンバー対応のための初期コスト、運用コストともにできるだけ抑えて運用したいと考えていると思います。
また、マイナンバーは収集と管理だけでなく、利用と提出まで含めて運用を考えることになります。現在、自社の業務システム(人事会計システムなど)があるならば、それと連携させて運用することになるでしょう。選定するベンダーやサービスによっては自社環境に対応できない場合がありえますし、自社環境に適用するためのカスタマイズで対応できるとしても、時間とコスト、そして手間がかかることでしょう。対応のための知識も必要です。中小企業としては、対応のための時間や予算に限りがある中で、選択肢がたくさんありすぎるとなれば、そもそも何を選べばよいかも分からないと悩んでしまいます。
もう1つ、先日、大手新聞で「マイナンバーの通知開始を受けて、家電量販店などではマイナンバー対応の給与計算ソフトやシュレッダーなどを集めて、マイナンバー関連の売り場を拡充するなど、対応の遅れが指摘される中小企業に照準を合わせた売り込みが盛んになっている」と報じられていました(日本経済新聞/2015年10月12日朝刊)。紙の書類でマイナンバーを収集、保管する物理的保管のためのツールが売れている(製造が間に合わないほど)という報道も見かけます。
紙書類とパッケージソフトウェアの組み合わせはIT化が進んでいない中小企業にも比較的理解しやすいものです。しかし、その後の運用の手間やコスト面を考えるといかがでしょう。マイナンバー対策のために新たな設備やシステムへの投資が必要な中小企業へ向けて、必要な機能だけを月額課金型などで買えるという仕組みの「クラウド基盤を利用したマイナンバー管理」が身近なシステムとして提案されていない状況があるかもしれません。
そこで今回は、中小企業にとって身近な存在である税理士向けにクラウド税務・会計・給与システム「A-SaaS」を提供している私どもアカウンティング・サース・ジャパンが、税理士と中小企業との最適な連携を考えて開発、提供するクラウドマイナンバー管理システム「マイナセキュリティ」と、本人確認を担保するためのオプションサービス「マイナドライブ」を紹介します。マイナンバー対策に多くのコストをかけられないと悩む中小企業の担当者へ、「クラウド型サービス」導入・選定の第一歩として参考にしていただきたいと思います。
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