IT部門が知っておきたい、10月の「マイナンバー制度変更」のポイント:税理士目線で提案する「中小企業のマイナンバー対策」(1/3 ページ)
この10月、はやくも幾つかの改正が発表されたマイナンバー制度。実はこれ、企業の負担を軽くしてくれるものなのです。何がどう変わるのか、さっそくチェックしてみましょう。
講師:中尾健一(なかお・けんいち)氏
アカウンティング・サース・ジャパン株式会社 取締役。1982年日本デジタル研究所(JDL)入社。日本の会計事務所のコンピュータ化を30年以上に渡りソフトウェア企画面から支えてきた。2009年、税理士向けクラウド税務・会計・給与システムを企画・開発・運営するアカウンティング・サース・ジャパンに創業メンバーとして参画、取締役に就任。2015年4月に発足したクラウドマイナンバー事業における「マイナンバーエバンジェリスト」として、中小企業の財務を担う税理士の視点から、マイナンバー制度が中小企業に与える影響を解説する。
マイナンバー制度10月以降で変更されたこと――その影響を考える
2015年10月5日に施行されたマイナンバー制度。住民票を持つ個人全てにマイナンバーが付番され、通知カードが全所帯に送付されました。関連省庁のWebページも、制度のスタートに伴ってより分かりやすく刷新されましたが、その中でマイナンバーの取り扱いに大きな影響を与える変更も公表されたのをご存じですか。
今回は、これらの変更内容を確認し、運用面にどんな変更が生じるのかチェックします。
本人交付の源泉徴収票にはマイナンバーの記載が不要に
大きな変更の1つは、2015年10月2日に所得税法施行規則等が改正され、「給与などの支払いを受ける従業員に交付する源泉徴収票には、マイナンバーの記載を行わないこと」となった点です(国税庁参照)。
9月までは、この従業員本人に交付する源泉徴収票にも、マイナンバーを記載することになっていました。そのため、中小企業や中小企業から委託を受けて年末調整業務を担う税理士事務所は、この取り扱いをどうするか検討していたはずです。
というのも、税理士事務所が年末調整を行う場合には、次のようなプロセスが発生します。
- 税理士事務所で本人交付の源泉徴収票にマイナンバーを印刷
- 顧問先の中小企業を訪れ、源泉徴収票を渡す
- 中小企業の担当者が従業員にマイナンバー入りの源泉徴収票を渡す
このプロセス自体は、従来の年末調整業務で当たり前のように行われてきましたが、“従業員に渡す書類にマイナンバーが記載される”ことで、新たに印刷時や受け渡し時の情報漏洩対策が必要になったのです。
また、従業員が所得証明のため、金融機関から源泉徴収票の提出を求められた場合にも、手が掛かるようになりました。それは、このケースがマイナンバー制度で規定された目的からは外れた利用となるためです。そのため企業の管理部門は、“マイナンバーを確認できないようマスキングしてから源泉徴収票を提出する”といった作業をする必要に迫られていました。
それが10月2日の所得税法施行規則等の改正で、一気に解消されました。もちろん源泉徴収票は、マイナンバーが記載されていなくても重要な個人情報であることに変わりはありませんが、“これまで以上のリスク対策を講じるためにどうすればいいか”という悩みからは解放されたのです。
次の図は、この改正後に国税庁から発表された、2016年分以後使用予定の給与所得の源泉徴収票の様式です。従業員など本人に交付される「受給者交付用」は税務署提出用で個人番号欄になっている箇所には斜線がひかれ、マイナンバーを記入できないようになっています。
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