IT部門が知っておきたい、10月の「マイナンバー制度変更」のポイント:税理士目線で提案する「中小企業のマイナンバー対策」(2/3 ページ)
この10月、はやくも幾つかの改正が発表されたマイナンバー制度。実はこれ、企業の負担を軽くしてくれるものなのです。何がどう変わるのか、さっそくチェックしてみましょう。
条件付きでマイナンバー記載が不要になる書類とは
もう1つの大きな変更は、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」(以下「扶養控除等申告書」)に、2016年(平成28年)以降も一定の条件を満たせば、マイナンバーを記載しなくてよくなったことです。
もともと、2016年分の扶養控除等申告書を2015年中に提出する場合は法令上、マイナンバーの記載は必要ありませんでした。ただし、マイナンバーの利用がスタートする2016年1月以降に扶養控除等申告書を提出する場合はマイナンバーの記載が義務付けられており、原則、マイナンバーの記載を省略できないことになっています。
そうした原則に変わりはありませんが、10月28日に国税庁のマイナンバーに関するFAQが更新され、条件が緩和されました。
「源泉所得税関係に関するFAQ」のQ1-9には、「給与支払者と従業員との間での合意に基づき、従業員が扶養控除等申告書の余白に『個人番号については給与支払者に提供済みの個人番号と相違ない』旨を記載した上で、給与支払者において、既に提供を受けている従業員等の個人番号を確認し、確認した旨を扶養控除等申告書に表示するのであれば、扶養控除等申告書の提出時に従業員等の個人番号の記載をしなくても差し支えありません」と記載されています。
つまり、次の2点を条件として満たせば、2016年以降に提出する扶養控除等申告書でも、マイナンバーを記載せずに済むことになります。
(1)平成28年1月以降、従業員などが扶養控除等申告書を提出する前に、企業(給与支払者)が別途従業員から本人および扶養親族のマイナンバーを収集。従業員と適切かつ容易にひも付けられるように管理していること。
(2)企業(給与支払者)と従業員との間で、扶養控除等申告書へのマイナンバーの記載について、上記のような方法とすることの合意があること
マイナンバーは“紙で取り扱わないこと”を基本に
何らかのシステムを使ってマイナンバーを電子データとして管理しているにもかかわらず、マイナンバーが記載された紙の書類も保管しなければならないとなると、企業の負荷は高まる一方です。「守る対象」は限定したほうが、セキュリティ対策も立てやすい上、より効果的な対策を講じることができるはずなのに……と思った人も多いのではないでしょうか。
この観点から考えると、申告書とはいえ、“税務署に提出するものではないが、企業に保管義務がある扶養控除等申告書”にマイナンバーを記載するのは、企業にとって重荷以外の何ものでもありません。
先に見た「源泉所得税関係に関するFAQ」のQ1-9では(注)のなかで、「この取扱いは、原則として税務署に提出されることなく給与支払者が保管することとされている扶養控除等申告書について、給与支払者の個人番号に係る安全管理措置への対応の負担軽減を図るために、個人番号の記載方法として認めるものである(以下省略)」としています。
今回の「源泉所得税関係に関するFAQ」で示されたのは、マイナンバーが記載された扶養控除等申告書の保管が企業にとって重荷となることを認識したうえでの措置といえ、企業の負担が取り除かれることになります。
そして、マイナンバーの利用シーンでは、本人交付の源泉徴収票にマイナンバーの記載が不要になったので、制度として紙での取り扱いや保管を求めるものは、基本的にはなくなりました。そうなると、マイナンバーは電子データでのみ取り扱い、紙では取り扱わないという運用が可能になります。
“マイナンバーを紙で取り扱わないこと”を基本とする場合、残る課題は「マイナンバーの収集方法」「税務署などへの源泉徴収票など法定調書の提出」「市区町村への給与支払報告書の提出方法」ということになります。
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