なぜ人は積極的に仕事に取り組まないのか:プロマネ1年生の教科書(2/2 ページ)
仕事やタスクをメンバーにアサインするのも、プロマネの大事な仕事です。ですが、思ったように積極的に取り組んでくれない……と悩む人も多いのではないでしょうか。今回は人のモチベーションを左右する5つの要素についてご紹介します。
仕事のやる気を左右する5つの要素
それでは、内発的動機付けについて詳しく見ていきましょう。人はどんなタスクだと内発的にやる気になるか。シンプルに言えば、与えるタスクに下の5つの要素が含まれていることが大事です。
- スキルの多様性……いろいろなスキルや能力を使って仕事ができるか
- 仕事の一貫性……最初から最後まで仕事が見通せるか
- 仕事の重要性……社内外への影響がどれほどあるか、自らが価値を感じられるか
- 自律性……仕事の進め方などを自分で決められるか
- フィードバック……仕事の手応えが感じられるか
そして、この5つの要素を以下の式に当てはめ、結果が高い方がタスクに積極的に取り組めます。各要素について数値化などはしていないので、あくまでも一般的な傾向だと捉えてください。
モチベーションの水準=
(1.スキルの多様性+2.仕事の一貫性+3.仕事の重要性)÷3×4.自律性×5.フィードバック
この式のポイントは掛け算がある部分。つまり1〜3の合計、そして4、5のいずれかがゼロだった場合、他の要素の状況に関わらず、モチベーションの水準はゼロになる、タスクに積極的に取り組めなくなるという点です。
ことIT業界で難しいのは、「2.仕事の一貫性」が見えにくい部分でしょう。タスクは縦割りかつ細分化されており、メンバーは自分がプロジェクト全体のどこに関わっているかが把握しにくいものです。
また「4.自律性」も感じにくい点です。ルーチンの作業が多かったり、手順が決められていたりすると“自由にふるまえない”と不満に思いやすいのです。そのような状況では、「1.スキルの多様化」も感じにくくなります。「5.フィードバック」についても、タスクを納めて終わり、というだけでは、手応えとしては薄くなりがちです。
もしも与えるタスク(仕事)に5つの要素がそろっていない、もしくはメンバー自身が感じそうにないときこそプロマネの出番です。タスクの見せ方や与え方を工夫し、メンバーに5つの要素を感じさせるようにします。例えば、以下のような細かい工夫がいくらでも考えられるはずです。
- スキルの多様性……メンバーの才覚に合わせた仕事をアサインする
- 仕事の一貫性……小さなことでもタスクを任せきる
- 仕事の重要性……仕事の価値をしっかり伝える
- 自律性……計画段階から任せてみる
- フィードバック……納品したものが動いている現場をみせる
さまざまな状況に対応しやすい“公式”ではありますが、1つ注意点があります。これは「仕事を頑張ろう」と心のどこかで思っていることが前提となります。そのため、プロジェクトの早い段階やメンバーの気持ちが元気(前向き)なときから、早々に使うのが効果的です。
もし、メンバーの気持ちが折れていたり卑屈になったりしていたら、この方法でモチベートするのはNG。しっかりと話を聞いて、向き合うことから始めましょう。メンバーの心の状態を整えるのが、何よりも優先すべき行動となります。
著者プロフィール:岩淺こまき
グローバルナレッジネットワーク株式会社 人材教育コンサルタント/ヒューマン・スキル講師
大手システム販売会社にて販売促進、大手IT系人材紹介会社にて人材育成、通信キャリアでの障害対応、メーカーでのマーケティングに従事。さまざまな立場でさまざまな人と仕事をし、「ヒューマン・スキルに長けている人間は得をする」と気付く。提供する側にまわりたいと、2007年より現職。IT業界を中心に、コミュニケーション・ファシリテーション・リーダーシップ、フォロワーシップ、OJT、講師養成など、年間100日以上の登壇及び、コース開発を行っている。日経BP「ITpro」で、マナーに関するクイズ形式のコラムを連載中。
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