タイプ別、プロジェクトメンバーの効率的な育て方:プロマネ1年生の教科書(2/2 ページ)
プロジェクトメンバー全員の面倒が見れて、育てられればベストだけどそんな時間も余裕もない――。そんな迷えるプロマネのアナタに、4タイプに分けた部下の育て方を伝授します。
楽勝? でも意外に手がかかる“右腕さん”
まず紹介するのは、右上に位置する“右腕さん”です。伸びしろも意欲も大きい分、やりやすいように思えますが、考えている以上にエネルギーが必要となります。特にタスクの準備やその後のフォロー体制には細心の注意を払いましょう。
右腕さんは成長意欲が高いため、成長欲求を刺激するタスクをプロマネが準備していく必要があるためです。難しいタスクをわざわざプロマネが作って与えるよりも、プロマネのタスクを少しずつ任せていくのが効率よく、そして長い目で見てお互いに幸せになれるでしょう。
ただし、仕事を任せた後のフォローは細やかにするように。具体的には「成長が実感できるようなフィードバック」と「決定的失敗を避ける見定めとバックアップ体制の準備」です。フォローが無いと“丸投げ感”が漂い、意欲を失って「次の右腕さん」に下がるかもしれません。
“粛々さん”は、なるべく右腕さんに任せよう
成長させるのに最も本気で取り組む必要があり、エネルギーを費やすのは左下に位置する“粛々さん”でしょう。毎日粛々とタスクに取り組む――手をかける優先順位としては最も低いはずですが、実際に手間がかかることが多いはずです。
ここは逆にプロマネ自身が時間をかけないようにするのがコツ。先述の“右腕さん”を早く成長させてフォローを任せ、互いに成長していくようコントロールしていくが現実的な対抗策となります。
成長意欲が高いうちに手を打つべき“もう一歩さん”
右下の“もう一歩さん”については「少しだけ」難しいのタスクを渡し、定期的に振り返りの機会を持つことが大切です。学んだことを今後どう生かすか考えさせることで、仕事のやりかたが身につき、それに伴い生産性も上がっていきます。
簡単すぎるタスクばかりだと物足りず、かと言って難しすぎるとできないため、少しだけ難しいラインを見定めるのがポイントとなります。放っておくと“粛々さん”になってしまい、余計に面倒なことになるため、成長意欲が高いうちに手を打たなければいけません。
“次の右腕さん”には期待を伝えて右腕へ
左上に位置する“次の右腕さん”はプロマネにとっては伸びてほしいと願う、育てがいのある人だと思います。プロマネからの期待をしっかり伝えたり、意義が感じやすい、特にメンバーが大切にしている価値観を刺激するタスクを与えたりするとよいです。
また、定期的にフィードバックや対話する時間を持つことで、プロマネや仕事に対する理解や信頼、愛着などが生まれて「右腕さん」になっていくのです。多少のケアは必要ですが、その見返りは大きいものになるでしょう。
さて、自分のメンバーをマッピングするとどのようになるでしょうか。
どのエリアに手間暇をかけるか。プロマネ自身やプロジェクトの忙しさで変わるとは思いますが、自らがどう動く必要があるかを押さえ、育成計画を立てる際の参考にしてみてはいかがでしょうか。「あの人の下につくと人が成長する」なんてウワサが出てきたら、それこそプロマネ冥利に尽きることです。
著者プロフィール:岩淺こまき
グローバルナレッジネットワーク株式会社 人材教育コンサルタント/ヒューマン・スキル講師
大手システム販売会社にて販売促進、大手IT系人材紹介会社にて人材育成、通信キャリアでの障害対応、メーカーでのマーケティングに従事。さまざまな立場でさまざまな人と仕事をし、「ヒューマン・スキルに長けている人間は得をする」と気付く。提供する側にまわりたいと、2007年より現職。IT業界を中心に、コミュニケーション・ファシリテーション・リーダーシップ、フォロワーシップ、OJT、講師養成など、年間100日以上の登壇及び、コース開発を行っている。日経BP「ITpro」で、マナーに関するクイズ形式のコラムを連載中。
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