第36回 「要件適合表」の功罪:テクノロジーエバンジェリスト 小川大地の「ここが変だよ!? 日本のITインフラ」(1/2 ページ)
ユーザーは「より良いものを使いたい」、ベンダーは「より良いものを提供したい」と考えているはずですが、なかなかうまくいかないことも。その理由の一端が「要件適合表」という存在です。
「次期iPhoneではイヤホン端子が無くなる」と噂されているそうです。撤回を求める嘆願書には世界中から20万もの署名が集まっていると海外のメディアが伝えています。
Appleは周りの意見に左右されず、自社の掲げるビジョンを突き進んでモノづくりをすることで有名ですね。悪く言えば他人の意見に耳を傾けない“独りよがり”とも言えるですが、結果として製品の満足度は高く、成功を収めているのも事実です。
2015年春に登場されたMacBook Airの新モデルは、当初辛口な意見が特に多かったように記憶しています。ですが、ここ最近はこれを仕事用として利用しているエンドユーザーをよく見かけるようになりました。最低でも10万円する高価なラップトップですが、直近の売上ランキングではMac部門で1位、Windowsも含めたノートPC全体でも5位だそうです。他メーカーからも類似製品が続々とリリースされるまでになっています。
では、ITインフラはどうでしょう?メーカーやSIベンダーはAppleのような革新的な製品・サービスを提供できていますでしょうか?
RFPに付いてくるここ変な○×表
ITインフラを構成するOS、ツール、ハードウェアは既製品ですが、ユーザーが手にするのはこれらを組み合わせて作るオーダーメイド、いわば注文住宅です。同じものは世の中に1つだけです。従って、ベンダーがApple製品のような革新的で素晴らしいアイデアを思い浮かんだとしても、それを構築・提供できたとしても、注文住宅である以上、お客様に採用していただかなければ陽の目を見ることはありません。
では、お客様はどうやってベンダーを選ぶのでしょうか?
1つはやはり価格でしょう。実際、公共のお客様などでは提示価格が最も安いベンダーが採用、つまり価格だけで決まってしまうこともあるくらいです。普通の企業でそこまでのケースは少ないですが、担当者としては「安かろう悪かろう」では困りますので、価格に加えて提案内容も精査するかと思います。いわゆる“技術点”のことで、中学の英語で習ったinexpensive(安い)なのか、cheap(安っぽい)なのかの見極めです。
この技術点を客観的に判断する方法として、日本では「要件適合表」と呼ばれる○×表が主流です。RFP(Requset For Proposal:提案依頼書)での要求内容をきちんと充足しているかを定量的に横並びで採点できるという理由から、ITインフラの調達場面でもとても重宝されているのですが、以前紹介した○×表に続き、こちらの○×表も“ここ変”と言えそうです。
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