“勝手に成長していく”メンバーの育て方とは?:プロマネ1年生の教科書(2/2 ページ)
成長しやすいメンバーと成長しにくいメンバー。両者にはシンプルな違いがあります。それは「経験から学べるかどうか」という点です。それではメンバーが経験から学べるようにするには、どうすればいいのでしょうか。
ストレッチ(挑戦する力)
成長するためにはまず、自分のレベルを越えたミッションに挑戦することが欠かせません。自らのレベル以下のミッションばかりこなしていると、メンバーは成長しませんし、やがて仕事がつまらなくなってくるでしょう。とはいえ、高すぎる目標だとやる気が失せてしまうので、それもまた問題です。
なので、プロマネは各メンバーが「少し頑張ったらできる!」というタスクや役割をアサインします。少し頑張る刺激が常に周囲にある、という状態を保つことに気を配りましょう。
そしてもう1点大切なのは、メンバーが挑戦できる雰囲気を作ることです。失敗するたびに糾弾されるような職場では、とても挑戦するマインドになれるわけがない。人が“挑戦”に向かうには、この職場にいていいんだという心理的な「安心感」が欠かせません。
きちんとフォローする体制がある、失敗しても再びチャレンジできる文化がある、決定的な失敗をしないように陰から見守っている――など、合わせて職場の環境作りも行っていくとよいです。
リフレクション(振り返る力)
いくら挑戦をしたところで、やみくもに数をこなすだけで能力が高まるわけではありません。得た知見を次に生かし、自らの行動を修正するために“振り返り”が必要です。
こういう言い方をすると、「PDCAなら、やらせている」と考える方もいるかもしません(細かく言うと「PDCA」ではなく「学習サイクル」ですが)。とはいえ、振り返りというのは意外とスキルがいる行動で、慣れるまでは一人で振り返ろうとすると多くの時間がかかってしまいます。定期的に1on1で、ゆっくりと一緒に話し合って振り返る機会を設けるのがいいでしょう。
その際、プロマネは改善点だけではなく、良い点も合わせてフィードバックを行いましょう。モチベーションの維持という観点でもそうですが、何が良いことなのか分かると、その行動が再現できるようになるのです。こちらの方が大事でしょう。
エンジョイメント(楽しむ力)
この要素については特に意識的に行うことがお勧めです。ストレッチとリフレクションは自然と取り入れやすいのですが、この2つの要素だけ行っていると“修行僧”みたいになり、仕事はつらくてナンボというような感覚になり、疲弊してしまいやすいのです。それよりも楽しんで仕事に取り組んだ方が、精神面でも生産性の面でも、当人にプラスが多いのは想像に難くないでしょう。
「仕事を楽しませる」というと難しく感じるかもしれませんが、仕事の意義を感じさせるようなアクションを取りましょう。仕事にどんな意義があるのか、自分はなぜこの仕事をしているのか、この仕事がなくなったらどんな影響があるのか……といった会話をしていきます。メンバーが何か経験をした後には、リフレクションの機会を作り、メンバーが達成感を味わえるようにします。
このように、プロマネはメンバーが「経験から学ぶ力」を実感できるように、タスクやアサインを調整したり、振り返りの時間を取ったり、仕事の楽しさや意義を伝えていきます。
そして何より、プロマネ自身が“きついんだよねー”と言いながらも、イキイキと仕事に取り組む姿が効果的です。メンバーは身近な人間の動態から、さまざまな学びを得るもの。「仕事や成長は楽しい」というエンジンがメンバーに装着されれば、自らどんどん育っていくはずです。
著者プロフィール:岩淺こまき
グローバルナレッジネットワーク株式会社 人材教育コンサルタント/ヒューマン・スキル講師
大手システム販売会社にて販売促進、大手IT系人材紹介会社にて人材育成、通信キャリアでの障害対応、メーカーでのマーケティングに従事。さまざまな立場でさまざまな人と仕事をし、「ヒューマン・スキルに長けている人間は得をする」と気付く。提供する側にまわりたいと、2007年より現職。IT業界を中心に、コミュニケーション・ファシリテーション・リーダーシップ、フォロワーシップ、OJT、講師養成など、年間100日以上の登壇及び、コース開発を行っている。日経BP「ITpro」で、マナーに関するクイズ形式のコラムを連載中。
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