もっと身近な“FinTech”のお話:半径300メートルのIT(1/2 ページ)
日本のFinTechといえば欠かせないのが確定申告と経費精算。便利なサービスが次々と登場して、かなり作業が楽になったのですが、あとちょっと、改善を期待したいところがありまして……。
私のようなフリーランスのライターは、毎年2月になると「確定申告」を行う必要があります。今回も無事、確定申告をクリアしましたが、同じライター業の知人たちは、いろいろと苦労している様子。そんな姿を横目に見つつ、私はクラウド会計ソフトを使って、ここ2年ほどは軽々とこなせるようになりました。
確定申告といえば、これまでは必死に勘定科目を覚え、基礎的な簿記の知識を付けた人が、毎月、ある程度の時間をかけて帳簿を付けていました。それが今では、クレジットカードの明細を自動で取り込むサービスや、レシートをスマートフォンのカメラで撮影すると、自動認識して取り込みまでしてくれるサービスまであります。おかげでかなりの省力化ができました。これぞ、ITの力なのかもしれません。
しかし、クラウド会計で楽になった確定申告も、あともう少しだけ簡単になってほしい部分があります。
銀行系のID/パスワードは誰にも預けたくないから
1つは、「銀行」の口座情報をいかに安全を確保しつつ、ITの恩恵を受けられるようにするか――ということです。以前にも取り上げていますが、スマートフォンやPCで簡単に家計簿をつけられるサービスや、先のクラウド会計ソフトなどは、銀行口座のID/パスワードを預けることで、サービス側が自動でネットにアクセスし、口座残高や明細を取り込む機能があります。
ただし、これはあくまで家計簿サービスやクラウド会計ソフトが独自に展開する機能であり、万が一、それらのサービスからログイン情報が漏えいした場合、銀行が保証してくれるとは限りません。銀行から見れば「大事なID/パスワードを自ら第三者に渡した」というように見えるからです。
そのため、私は銀行に対しては直接アクセスさせるのではなく、いったんファイルにダウンロードし、それをわざわざアップロードするという手段をとっています。
- 半径300メートルのIT:その漏えいしたID、自分の「お金」に直結していませんか? | ITmedia ビジネスオンライン
これは、皆さんも使っている「Twitter」に関連するサービスに近いかもしれません。例えば「あなたの性格を面白おかしく診断してあげましょう、では早速、TwitterのIDとパスワードをここに入力してください」と言われたとき、皆さんは入力しますか? さすがにTwitterでもないサービスの画面に、自分のTwitterのIDとパスワードを入力するという人はいないでしょう。
今ではTwitter以外のサービスに対し、TwitterのID、パスワードそのものを渡すのではない、「アプリ連携」という仕組みが用意されています。クラウド会計ソフトや家計簿サービスでも同じで、銀行もそういう仕組み――ID、パスワードそのものを入力させるのではなく、アプリ連携的な「認可」を与える仕組み――があれば、安心してITの便利さを享受できるはずなのです。
実はこのような仕組みが、ネットバンクである住信SBI銀行と、クラウド会計ソフト/家計簿サ−ビスを提供するマネーフォワードとの間ですすめられています。個人的には「やっときたか!」という印象で、このためだけに銀行口座とサービスの利用をこの2社に変更してもいいと思うほどの快挙だと思っています。
- マネーフォワード、住信SBIネット銀行提供のAPIとの公式連携を開始 | マネーフォワード
銀行の“アプリ連携”(正確には「API開放」)が実現したいま、あともう1つだけ「ここが変わると、日本の経理が大きく変わるのでは」と思うものがあります。それは「交通費精算」です。
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