もっと身近な“FinTech”のお話:半径300メートルのIT(2/2 ページ)
日本のFinTechといえば欠かせないのが確定申告と経費精算。便利なサービスが次々と登場して、かなり作業が楽になったのですが、あとちょっと、改善を期待したいところがありまして……。
日本企業の「経費精算IT化」、もう1つの大きな壁
交通費の支払いは、「Suica」や「PASMO」のようなICカードを利用しているビジネスマンがほとんどでしょう。先進的な企業はこのICカードを直接読み取り、自動で精算が行える仕組みを取り入れているかもしれません。
しかし、PASMOやSuicaは、カードの中に記録されている履歴が直近の20件のみであるため、月末にまとめて処理しようとすると記録が消えてしまっています。そうなると、記憶を頼りに交通費を書き出すか、券売機で発行された「紙」の利用履歴を元に、手で入力する必要があります。
ICカードであれば、インターネット経由で記録を取り出せるのでは? と思うかもしれません。実はその方法を提供しているICカード事業者はほとんどないのです(2016年3月時点)。
象徴的なのは関東圏で使われている「PASMO」。実はサービス開始当初は、インターネットから履歴を確認できる「マイページ・PASMO履歴照会サービス」が存在していました。ところが、そのサービスに致命的なプライバシー問題があったため、2012年3月1日にはサービスを一時停止し、その後復活することなく、サービスの終了がアナウンスされたのです。
交通系ICカードの履歴を、インターネット経由で安全に取得できれば、企業の交通費精算はかなり楽になるはずです。履歴を自動で収集し、その中から業務で利用したものだけを選択し、経費申請をすればいいだけなのですから。今の仕組みでは、カード内の20件の履歴があふれる前に、何らかの作業をしなくてはなりません。
私はこの作業を忘れてしまうのがイヤで、関東圏では唯一ネットで履歴が取得できる「モバイルSuica」を利用しています(余談ですが、関西圏ではスマートICOCAが履歴取得に対応しており、わざわざ大阪でこのスマートICOCAを手に入れて東京で使っている人もいるとか)。
今、にわかに「FinTech」と呼ばれる分野が盛り上がりを見せています。個人的にはブロックチェーンなど、話題の技術も気にはなっていますが、むしろ私たちにとってより身近な、銀行のインタフェースや交通費精算の分野でこそ、もっともっとITを活用してほしいと思うのです。
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