米司法省、「麻薬犯のiPhone 5sではやっぱりAppleの助けが必要」
カリフォルニア州でのテロ事件捜査では「購入したロック解除ツールでiPhone 5cのデータにアクセスできた」としてAppleへの協力命令の要請を取り下げた司法省だが、ニューヨークで係争中のiPhone 5sのロック解除については引き続きAppleの協力が必要だという文書を地裁に提出した。
米司法省(DoJ)は4月8日(現地時間)、ニューヨーク東地区連邦地裁(以下、ニューヨーク地裁)に対し、ブルックリンでの麻薬捜査に関連する米Appleに対するiPhoneロック解除命令の要請は取り下げないという文書を提出した。
DoJはカリフォルニア州中部地区連邦地裁に申し立てていた別件(サンベルナルディーノの福祉施設で起きた銃乱射事件)でのロック解除ツールの要求については3月28日、第三者から購入したツールで犯人のiPhone 5cのデータにアクセスできたのでAppleの協力は必要なくなったとして取り下げた。
米連邦捜査局(FBI)のジェイムズ・コーミー長官は7日、このツールはiPhone 5s以降のモデルでは使えなかったと語った。
ブルックリンの事件で問題になっている端末は、逮捕された犯人が所有していたiOS 7搭載のiPhone 5sだ。ニューヨーク地裁のジェームズ・オレンスティン判事は2月29日、Appleからの命令取り消しの申し立てを受けてDoJの要請を退け、DoJは3月7日に控訴した。ニューヨーク地裁は3月29日、DoJがカリフォルニア地裁で申し立てを取り下げたことを受け、DoJに対して控訴を取り下げるかどうかを4月11日までに回答するよう命じた。
DoJは3月7日の意見書で、1789年制定の「All Writs Act」(全令状法)を根拠にロック解除命令の正当性を主張している。オレンスティン判事はこの法律について反対の解釈を示し、DoJの主張に疑問を呈した。
Appleによると、ニューヨーク地裁のこの件を含めて少なくとも12台のiPhoneについてDoJからロック解除を要請されたという。
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