GEに聞く、IoTでビジネスが一変する理由(2/2 ページ)
2012年に「インダストリアル・インターネット」というビジョンを掲げ、IoTへの取り組みをいち早く始めたGE。IoTという大きなトレンドに対し、同社は“企業や産業の垣根を超えたビジネスチャンス”を感じているという。その理由とは……。
モジュール単位で見れば、産業も業種も関係ない
ハードウェアの会社からソリューションも含めた複合的なビジネスに舵を切りつつあるGEは、IoTのどこに可能性を感じているのだろうか。
「弊社では、航空機メーカーへのジェットエンジンの提供や定期メンテナンスのサービスからエンジンの予兆管理、そして最適な運行状況を実現するためのコンサルティングを行うようになりました。
とは言っても、飛行機が飛ばなかったり遅れたりするのは、エンジンだけが理由ではありません。クルーの配置や整備要員の割り当てなど、いろいろなところに課題があるのです。そして、そこに今までGEがインダストリアル・インターネット事業で作ってきたアプリがピタッとはまるということが起こり始めています」(新野氏)
これは、LIXILの事例でも同じことがいえる。同社が導入した浴室設置業務における業者割り当ての最適化ソリューションは、もともと発電所の作業員や、病院における看護師のシフト割り当てのために作っていたモジュールを利用したものだそうだ。
「LIXILから話を聞いたときに『人員の割り当てを経験や勘に頼っていて、納期のばらつきにつながっている』という課題が分かり、『それならば、このモジュールを使えば改善されるのではないか』という話になってプロジェクトが始まったのです。LIXILというビジネス上の付き合いがなかったような企業でも、モジュールという単位でみると、課題解決にフィットするケースがあるので、さまざまな分野にビジネスの領域が広がっていくという期待はありますね」(新野氏)
“人の割り当ての効率化”という課題でソリューションを考えるのならば、もはや産業という垣根は意味がなくなる。自動車工場の作業員の配置、宅配便トラックのルート、テーマパークや空港内のスタッフの配置などのビジネス課題も、解決へのアプローチは似ている。
今後はデータを武器に異業種だと思っていた企業が自社のビジネスに参入することも増えていくだろう。クラウドや人工知能など、ITの進化がその流れを加速させることは疑いようがない。
「人ベースでやっていたことをモジュールに置き換えていく。そしてそのモジュールはクラウド上にあって、人工知能や機械学習などの技術を取り込むことによって、精度が上がっていく。そういう継続的な効果が見込めるわけです。2015年10月にGEデジタルという組織を立ち上げていますが、そこではGEが行っているビジネスのサポートのほか、GEの製品以外のお客さまの課題解決も行っています」(新野氏)
インタビュー後編では、企業が課題をIoTで解決するための方法や、日本でIoT導入がなかなか進まない理由を聞いていく(後編に続く)。
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