“攻めのIT”ができる情報システム部門になるために(2):成迫剛志の『ICT幸福論』
「うちの情シス、ダメで……」という話を耳にした著者が、その処方箋として「デジタルビジネス時代に対応する“攻めのIT”ができる情報システム部門への改革」を考察。第2回は、「情報システム部門業務の内部体制」について整理する。
この記事は成迫剛志氏のブログ「成迫剛志の『ICT幸福論』」より転載、編集しています。
前回は、
- “攻めのIT”が企業の存続の重要な要素となっていること。
- 今いわれている“攻めのIT”とは従来のSIS(戦略情報システム)やBI(ビジネスインテリジェンス)などとは異なること。
- ITの活用によって直接的に自社の製品・サービスの開発強化やビジネスモデルの変革を通じて新たな価値を創出し、競争力の強化すること。
- “攻めのIT”のための情報システム部門改革を考えるに当たって、現在の情報システム部門の企業における位置付けを確認したいこと。
について述べた。そして、検討に当たって考えるべきことの1つ目として「情報システム部門の位置付け」を挙げた。
2つ目に考えたいのは、「情報システム部門の内部の体制」である。
2. 情報システム部門業務の内部体制:内製とアウトソースの割合
ネットコマースの斎藤昌義氏によると、日本と米国で以下のような差があるとのことである。
米国ではITエンジニアの28%がITベンダー企業に所属しており、全体の3/4である72%のITエンジニアはユーザー企業に所属している。恐らくユーザー企業の情報システム部門に所属しているのだろう。
それに対して、日本ではITエンジニアの75%がITベンダー企業に所属しており、ユーザー企業に所属しているのはわずか25%である。
このことから、米国と比較し、日本のユーザー企業の情報システム部門の業務の多くが、ITベンダー企業に“外部委託”されていると思われる。
日本のユーザー企業においても、このことを問題視し、内製比率を高めようという動きが少なくない。ただ、その前にどのような業務を外部委託しているのかを整理しておいた方がよさそうだ。
情報システム部門の業務を以下ように、「企画・計画」「開発・導入」「運用・維持・保守」「管理」という4つの切り口で整理してみることにする。
感覚値ではあるが、“守りのIT”が重視されている企業においては、意図的ではないにしても、以下のように「運用・維持・保守」に内部の人材の手間が取られてしまい、その他の業務を外部委託しているケースが少なくないのではないだろうか?
煩雑な「運用・維持・保守」業務やトラブルなどに忙殺されてしまうと、肝心の「企画・計画」業務に手が回らなくなり、外部委託してしまっているケースもあるだろう。
また、フルアウトソーシングを推進した結果、ブラックボックス化してしまい、企画計画も含めて外部委託状態となり、情報システム部門は管理だけしているというケースもあるかもしれない。
このような状態が続いてしまうと、“攻めのIT”に必要となる“現在活用できる最新の情報技術”に関する情報や知識が得られない状態となり、また同時に、これも“攻めのIT”に不可欠な“自社の商品・サービスと自社の顧客とそのニーズ”についても「よく知らない」という情報システム部員ばかりになってしまう可能性がある。
“攻めのIT”への対応策の一環で“内製化”を考える際は、どの部分を内製化すべきかを十分に検討した上で実施した方がよさそうである。特に、「企画・計画」は必ず内製とし、コントロールを取り戻しておくべきだろう。
著者プロフィル:成迫剛志
SE、商社マン、香港IT会社社長、外資系ERPベンダーにてプリンシパルと多彩な経験をベースに“情報通信技術とデザイン思考で人々に幸せを!”と公私/昼夜を問わず活動中。詳しいプロフィルはこちら。
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