人を“納得させる”プレゼンスキル、2つのポイント:プロマネ1年生の教科書(2/2 ページ)
プロジェクトの約束ごとを守らせるにはどうすればいいか――。時と場合によって必要なスキルは異なりますが、議論の余地がないテーマについては「プレゼンテーション」のスキルが有効です。今回は相手に納得してもらうプレゼンのポイントについてご紹介します。
質疑応答で失敗しないために
質疑応答の時間はメンバーがテーマ(決定事項)に関わるよい機会であり、メンバーが納得感を得て「自分ごと」に感じてもらうチャンス。そのためにも絶対に外せません。
質疑応答の基本的な進め方は「質問を促す」「質問を復唱する」「結論から答える」の繰り返しです。
内容についての説明が終わったらまず、プロマネ自身から“何か質問はありませんか?”とメンバーに話を振ります。その際に努めて和やかな雰囲気(メンバーが質問しやすい空気)を作り出すのが大事です。質問を促したら、ゆっくりと間を取ってください。プロマネとしてはもどかしい時間かもしれませんが、メンバーが理解を深め、質問内容を考えている貴重な時間です。おおらかな気持ちで待ちましょう。
実際に質問が来たら、丁寧に誠実に対応します。“は?”と表情をゆがめたり、時計を見たりするのはNG。相手が質問しやすい態度で聞き、質問内容を復唱します。特にメンバーの人数が多くなればなるほど、復唱は重要です。メンバー全員が質疑応答のやりとりに参加できるため、全員の理解や参加意欲が高まるからです。
質問に対する回答は、結論から話すのが基本です。YesかNoで返せる話であれば、まずはそれを話しましょう。そのあとに理由を述べるとメンバーの理解が深まるほか、プロマネへの信頼度も上がります。どんなメンバーでも、どんな質問でも、丁寧かつ大切に対応することを心掛けましょう。
「クロージング」を大切にすること
説明の時間を終わらせる瞬間も大切です。仮に時間がなくなってしまっても「時間無いから、何かあったらメールで」などと打ち切るよりは、クロージングの時間をしっかり取るのが望ましいです。
「いろいろな質問に回答したけど、内容は理解できたでしょうか? 作業して何かあれば、いつでも声かけてください」という感じで、“頑張りましょう”など、メンバーの意欲を上げる一言をしっかり伝えて終わりましょう。
行動経済学者のダニエル・カーネマンが提唱した「ピークエンドセオリー」という法則があります。「≪人は自分の経験を、一番感情の残ったそのピーク時の印象と(今回であれば質疑応答時)、それがどう終わったか(終了間際)の印象だけで判断している」というものです。
以上をまとめると、誠実な質疑対応をきちんと終わらせることで、次の効果が期待できます。
- 「メンバーの理解を深める」「テーマに関われた感を生み出す」→「自分ごと」化できる
- 「プロマネへの信頼感」「意欲を上げて終わる」→よい印象で仕事に取り組める
メンバーが約束を守り、高いモチベーションで仕事を行うという点についていえば、決定事項について話す時間よりも、質疑応答の時間の方が重要です。後者に時間を割けるよう時間を計画し、説明に臨んだほうがよいでしょう。
著者プロフィール:岩淺こまき
グローバルナレッジネットワーク株式会社 人材教育コンサルタント/ヒューマン・スキル講師
大手システム販売会社にて販売促進、大手IT系人材紹介会社にて人材育成、通信キャリアでの障害対応、メーカーでのマーケティングに従事。さまざまな立場でさまざまな人と仕事をし、「ヒューマン・スキルに長けている人間は得をする」と気付く。提供する側にまわりたいと、2007年より現職。IT業界を中心に、コミュニケーション・ファシリテーション・リーダーシップ、フォロワーシップ、OJT、講師養成など、年間100日以上の登壇及び、コース開発を行っている。日経BP「ITpro」で、マナーに関するクイズ形式のコラムを連載中。
- ブログ:「働くママの“人育て”日記」
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