人を心地よく巻き込む――プロマネに必要な「ファシリテーション」スキルとは?:プロマネ1年生の教科書(2/2 ページ)
プロジェクトの約束ごとを守らせるにはどうすればいいか――。今回は「ファシリテーション」のお話です。会議を仕切るというイメージを持っているかもしれませんが、本来の意味は参加者の合意形成や相互理解を支援するスキル。では、一体何をすればよいのでしょう。
プロマネが進行役ならなおさらです。周囲と一緒に悪い雰囲気に加担してしまえば、よい結果が生まれるはずがありません。その場をどんな雰囲気にしたいのか考え、行動することが必要です。
そしてメンバーから意見を集めるときにも、気を付けるべきポイントがあります。「メンバーの意見を大事に扱うこと」、そして「意見出しの段階で、よいも悪いも評価しないこと」の2つです。
時間を取って参加したメンバーを尊重するためにも、意見を大事に扱わないのは本来“あり得ない”ことではあるのですが、「相手の意見を途中で遮る」「興味がなさそうな表情で聞く」「意見聞いた後の第一声が“でもさー”などの否定語」など、大事に扱わないケースが多いのが現実です。
また、意見出しの段階では「よい、悪い」という評価はしない方が安全です。否定しないのは先ほど書いた通りですが、「いいねぇ」という反応も、他のメンバーが「もっと良い意見を出さないと……」とプレッシャーを感じて、意見を言いにくくなりますし、無意識のうちに議論の方向を誘導してしまいかねません。
極力、意見に対する私見は入れないこと。ブレーンストーミングなどのアイデア出しでも同じことがいえるので注意してください。「メンバーの話を最後まで聞いて、復唱して、ホワイトボードに書く」。これだけでも、徹底してやってみることで何らかの変化を感じられるはずです。
3.会議を“きちんと”終わらせる
会議が終わった後に「意見は出したけど何も決まらない」「自分の意見が反映されていない(反映されたかどうかも分からない)」など不満が出るようでは、納得感どころの話ではありません。もちろん、時間の都合などで、意見出しの途中で終わることもあるでしょう。そんなときも「ここまで決まった」という成果を示すようにします。
なぜなら、メンバーの関心は「自分の意見(や投資した時間)が、どのような影響を及ぼしたか」という点にあるからです。「今回の会議では、皆さんから〜〜の意見を出してもらいました。これらの意見をふまえて、お客さまに提案します」「次回までにこういう切り口で整理する予定ですが、よいですか?」などと伝えます。「ここまで決まった+これからどうする」を明確に共有して、ようやく会議は終了するのです。
さて、最後にメンバーの納得感を最も下げることについてお話しします。
それは、会議のスケジュールを決めるときに、プロマネの一存で決めてしまうことです。“こっち(メンバー)の都合も聞かず、勝手に決められた感”があると、メンバーの協力体制すらも危うくなります。
“仕事なんだからやれよ!”と言いたいプロマネの気持ちも分かります。しかし、それでも手間を惜しまないでやってほしいのです。なぜなら、メンバーだって仕事だからやらなきゃいけないのは十分分かっているからです。メンバー側にはメンバー側の事情や思いがあって、それを納得させるための理由を探しています。自分を納得させるために、やっぱり一言かけて欲しいと思っているのが、正直なところでしょう。
もしも「独断」に近い状況になってしまったなら、前回の記事のように、決めた背景や理由を説明し、質疑応答をしっかり行ってメンバーが納得するように努めること。これしか解決への道はありません。人を心地よく巻き込めることが、成果を上げるプロマネになるために必要な条件だと心得ましょう。
著者プロフィール:岩淺こまき
グローバルナレッジネットワーク株式会社 人材教育コンサルタント/ヒューマン・スキル講師
大手システム販売会社にて販売促進、大手IT系人材紹介会社にて人材育成、通信キャリアでの障害対応、メーカーでのマーケティングに従事。さまざまな立場でさまざまな人と仕事をし、「ヒューマン・スキルに長けている人間は得をする」と気付く。提供する側にまわりたいと、2007年より現職。IT業界を中心に、コミュニケーション・ファシリテーション・リーダーシップ、フォロワーシップ、OJT、講師養成など、年間100日以上の登壇及び、コース開発を行っている。日経BP「ITpro」で、マナーに関するクイズ形式のコラムを連載中。
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