ビジネスを変えないデータ分析は意味がない 大阪ガス河本氏に聞く、IT部門の役割:情シス“ニュータイプ“の時代(1/2 ページ)
データ分析が脚光を浴びる前からその可能性に注目し、着々と結果を出してきた大阪ガス。その立役者がデータサイエンティストの河本薫さんだ。なぜ、大阪ガスの分析チームは結果を出せるのか、社内で頼られる専門家チームになるためにどんな取り組みをしているのか――。同氏に聞いた。
ここ数年、熱い視線を浴びているデータサイエンティストという職業。大阪ガスの情報通信部 ビジネスアナリシスセンター長の河本薫さんは、ブームが巻き起こるずっと前からデータ分析でビジネスの変革に貢献してきた、この道の第一人者だ。
なぜ、大阪ガスの分析チームは結果を出せるのか、社内で頼られる専門家チームになるためにどんな取り組みをしているのか――。河本さんの哲学や分析チームの仕事は、情シスが価値を発揮する上でもヒントになるはずという思いを持って、同氏に聞いた。
ビジネスを変えて初めて、データ分析は「成功」といえる
河本さんが率いるビジネスアナリシスセンターは、大阪ガスの情シスにあたる情報通信部に属し、専門チームとして社内のさまざまなデータ分析に携わっている。
事業部から持ち込まれるのは「このデータでこんな分析をして欲しい」といった単純なリクエストではなく、「今、こんなことで困っているのだが、データ分析で何とかできないだろうか?」といったビジネス課題のレイヤーでの相談がほとんど。単に分析結果を示すのではなく、課題を把握し、「果たしてデータ分析で解決できるのか?」を検討するところからがチームの仕事なのだ。
ここまでなら社外のコンサルタントでもやってくれそうだが、河本さんらはもう一歩踏み込み、データ分析をした後の影響まで考える。
「分析をして面白い結果や精度の高い予測が出てきたとしても、今の業務プロセスのどこでどんな風に、誰が使うのかという具体的なイメージまで描けないと、実を結ばないケースが多いんです。だから分析を始める前に、『それをやって、本当にうまくいくのか?』を考えることがすごく大切です。業務が変わるところまでの青写真をちゃんと描けるのかを吟味する。私たちは目利きみたいな役割があるんですね」(河本氏)
データから何らかの解を導き出すことにとどまらず、それをビジネスに生かして初めてデータ分析は成功したといえる――。河本さんはそう考えているのだ。
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