覇権争いが激化 エンタープライズプラットフォームの勢力図はどう変わる?:Weekly Memo(2/2 ページ)
エンタープライズプラットフォームをめぐる勢力争いが激しくなってきた。この分野で火花を散らすSAPとOracleが先週、相次いで興味深い動きを見せた。果たして今後の行方やいかに。
SAPとOracleを対立軸に展開される勢力争い
この2つのニュースをエンタープライズプラットフォーマー同士の勢力争いという観点で見ると、まずSAPにとってIBMとの協業強化は、非常に大きなインパクトがあるだろう。SAPジャパン社長の福田譲氏に両社の協業強化の意義を聞いたところ、「エンタープライズ分野で大きなプレゼンスを持つIBMとパートナーシップを強化したことは非常に心強い。こうした発表を行えること自体に意義がある」とのことだった。このタッグは、Oracleにとって脅威になるのは間違いない。
一方、OracleがNetSuiteを買収すれば、SAPのERPの牙城を切り崩す動きに弾みをつけることができる。実は、NetSuiteはOracle創業者で会長のラリー・エリソン氏が共同出資して創業し、今も大株主に名を連ねている会社である。従って、そのうちOracleが買収するのでは、との臆測が常にあった。Oracleがここにきてクラウド事業に注力するようになり、その臆測が現実になった格好だ。
さらに、NetSuiteと同様のルーツを持つ有力なクラウドベンダーがもう1社ある。Salesforce.comだ。同社CEOのマーク・ベニオフ氏はOracle出身でエリソン氏との親交も深く、創業に当たってエリソン氏から出資も受けている。そんなことから、OracleはNetSuiteに続いてSalesforce.comも手中に収めようとしているのでは、とも考えられるが、NetSuiteとSalesforce.comでは売上高が一桁違うので、あるとすれば「合併」に近いイメージだろう。もし、OracleとSalesforce.comが一緒になれば、エンタープライズプラットフォーマーとして一大勢力になりそうだ。
これまでSAPとOracleを中心に見てきたが、名前を挙げたIBMもSalesforce.comも恐らくエンタープライズプラットフォーマーになることを狙っている。また、これら4社それぞれと協業関係を持つMicrosoftもしかりだろう。さらに、クラウドネイティブな立場から、IaaSだけでなくPaaSにも注力しているAmazon Web Services(AWS)やGoogleも、エンタープライズプラットフォーマーになりたいと考えているはずだ。
そうした中で、勢力争いの今後の行方を左右する動きとして注目されるのは、先述したOracleとSalesforce.comの関係に加え、MicrosoftがSAPとOracleのどちらの関係を重視するのか、AWSとGoogleがそれぞれSAPやOracleとどのような関係を構築するか、である。いずれにしても、エンタープライズプラットフォーマーの勢力争いは、SAPとOracleを対立軸に激しくなっていくのではないか。それはもちろん、どの勢力がより多くのユーザー企業の支持を得られるか、にかかっている。
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