データ活用に本腰のセゾン、なぜ「Tableau」と「Azure」を採用したのか:プライベートDMPで新ビジネスを(4/4 ページ)
社内のデータを活用するため、約1年かけてプライベートDMPを構築したクレディセゾン。その裏にはセルフサービスBIの導入や、社内初のクラウド導入といったさまざまなチャレンジがあったという。
コンプライアンス部門も巻き込み、クラウド導入に踏み切る
プライベートDMPの導入と聞くと、各種データ統合に耐えうる形に整備するという点で苦労しそうだが、クレディセゾンではその点はあまり問題がなかったそうだ。一方で、苦労したのは、いかにセキュリティを担保するかだった。
2015年に経済産業省は「クレジットカード産業とビッグデータに関するスタディグループ」を設置し、ビッグデータの利活用に関する報告書をとりまとめた。スタディグループには吉田氏らと同じネット事業部の磯部泰之データマーケティング部長がメンバーとして参加しており、そこからの情報も得ながら、今後の法制度の改正等も想定し、セゾンDMPでは、会員データを特定の個人を識別できないように加工して利用している。
さらに、同社としては初めてクラウドサーバを導入するという決断も大変なポイントだったという。今後増大していくデータ量を想定して自社サーバを立てるのは非効率。スケーラビリティやコストの観点からはクラウドサーバは有効な選択肢ではある。
「セゾンDMPに個人情報は一切入っていないのですが、やはりわれわれは信用第一の業態なので、万が一のときの影響は計り知れません。情報をしっかり守っていくということが大前提です。そのため、データを社外に預けるという選択には、最初は抵抗があり、さまざまな社内調整が必要になりました」(吉田氏)
クレディセゾンの場合、カードの会員情報やWeb行動履歴といったデータは、オンプレミスで管理しているが、セゾンDMPのプラットフォームはMicrosoft Azureを採用した。
導入の際はAWSも検討したとのことで、「どちらも機能や価格の面では、大きな差はなかったが、今回はセキュリティ担保のために必要なコミュニケーションが取りやすかったのがAzureだった」(吉田氏)という。
例えばデータセンターの見学を行い、井上氏は「ここまでやっているのか」と、そのセキュリティ強度にあらためて信頼感を抱いたそう。そして、見学の際にはコンプライアンス部門のメンバーにも同行してもらい、その感覚を共有した。ステークホルダーを巻き込むことで、社内の理解を得てクラウド導入に踏み切ることができたのだ。今回はAzureを選択したが、今後はAWSなどの他ベンダーのクラウド導入も含めて、さまざまな可能性を検討しているという。
近年、クレジットカード業界は年会費やポイントの還元率、加盟店の規模だけではなく、「サービス」で差別化を図る方向に切り替えつつある。DMPを構築し、データ活用で付加価値を狙う――これがこれからのクレジットカードビジネスのスタンダードになるのかもしれない。
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