機能ばかり見ていると、セルフBIの導入は必ず失敗する:セルフサービスBIの「光と闇」(後編)(1/3 ページ)
さまざまなツールがある中で、どのようにしてBIツールを選べばよいのか。ガートナーの堀内氏は、ツールだけで考えるのではなく、データ活用の体制と業務部門のコミュニケーションがそのカギを握ると話す。
インタビュー「セルフサービスBIの『光と闇』」
企業のデータ活用において「セルフサービスBI」を導入するケースが増えてきているが、その成否は二分しているのが現状だ。その理由はどこにあるのかをガートナー ジャパンの堀内秀明氏に聞く本インタビュー。後編は、セルフサービスBI導入時に気を付けるポイントやBIツールの今後について聞いた。
比較表を作ってマルバツをつければいいというわけではない――。堀内氏はBIツールの選定について、次期の情報活用基盤や情報活用の体制と合わせて考えるべきだと話す。
現場がデータ活用するというときに、どんな情報をどう活用する可能性があるのか。そして、情報システム部門が一元的かつ最低限提供する必要があるものは何か、それはどのようにして提供するのか。これを整理することがツール選定の第一歩だという。
「現場のマネジメント層やパワーユーザーが直接データに触れる必要があると判断したときにはじめて、セルフサービスBIが候補になるでしょう。そして、利用人数によっても向くツールは異なります。分析結果を多くの人に共有する場合、ベンダーのプラットフォームで共有するのか、データ項目だけを引き継いで、一元集中型のBIで再度レポートを作るのがいいのか。
1つの利用シーンだけを見ると、これこれの機能があって……といったように機能にフォーカスしがちですが、データ活用の戦略全体から見たときに『セルフサービスBI』をどう位置付けるか、誰がどこまで面倒を見るのかを考える必要があるのです」(堀内氏)
誰が「セルフサービスBI」活用の面倒を見るのか?
セルフサービスBIを導入する際は、どのようなサポート体制を作れるかも成否を分けるカギになるという。「セルフ」という言葉からは“業務部門に勝手にやってもらえる”という印象を受けがちだが、決してそのようなことはない。各種機能の使い方やデータの見方など、相応のリテラシーが求められるのが実情だ。
そういったリテラシーが高い人が、社内に満遍なくいる企業はごくまれで、基本的には誰かがサポートをしなくてはならない。しかし、専任の部署や役職を置いているケースは少ないという。
「大企業であれば、情報システム部門と業務部門の間に情報活用推進グループみたいな部署があるケースもありますが、ないならば新規で部署を作るよう経営層に進言するなり、既存の部署がその役目を担うしかありません。サポート体制がないと、ちょっとデキる人が悪知恵を働かせて『われわれの計算だとこうだ』と、数字をごまかすような話も本当にありました。単に業務部門に任せただけではカオスな状況に陥ってしまうのです」(堀内氏)
セルフサービスBIを導入したものの、違うデータが複数部門から出てきてしまえば、経営陣もその数字を信用できなくなる。結局このケースでは、経営トップからセルフBI禁止を言い渡されてしまったそうだ。
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