機能ばかり見ていると、セルフBIの導入は必ず失敗する:セルフサービスBIの「光と闇」(後編)(2/3 ページ)
さまざまなツールがある中で、どのようにしてBIツールを選べばよいのか。ガートナーの堀内氏は、ツールだけで考えるのではなく、データ活用の体制と業務部門のコミュニケーションがそのカギを握ると話す。
データ活用の普及には“審判”が必要
セルフサービスBIツールの面倒を見る、というと難しい仕事に思えるかもしれないが、その役割はスポーツの審判に例えると分かりやすいというのが、堀内氏の見方だ。
「スポーツをする上では、必ずルールが必要です。そしてルールを守る上では審判が要る。私たちはそのジャッジを行う人間を“スチュワード”と呼んでいます。このデータはこう使う、あるいはこの人たちはデータをここまで使って良い――という感じです。チーム内では自由に加工していいデータも、役員会議でそれをやっては大変なことになる。一元管理型のBIなどを使ってオフィシャルなデータを作るのも、1つの方法でしょう」(堀内氏)
こうした役割をどこが責任を持って進めるのかという点は、各企業で悩むポイントかもしれない。しかし、これはツールやベンダーが助けてくれるわけではない。企業自らが決めなければならないのだ。業務部門が勝手にツールを導入して活用する様子を放置していると、いずれどこかでデータが“間違った”形で使われてしまうリスクが出てくる。
「2015年までは、セルフサービスBIそのものや使い方に注目が集まっていましたが、リスクに目が向き始めたのが2016年の変化と言えます。リスクに対して声を上げられるのは情報システム部門ですし、その必要性はあるでしょう。データ活用の結果として情報漏えいなどが起きたら大変ですし。ただ、業務部門からすればスピードが命。『何でもいいから早くデータちょうだいよ』ということになるわけです。このバランスをどう取るのかが、恐らく全ての企業の課題になりつつあるのではないかと思っています」(堀内氏)
日本企業の多くは、ビジネスチャンスと漏えいリスクを比べたときにリスク回避を選びがちだ。しかし、それで競争に負けてしまえば、結局企業はなくなってしまう。経営陣からすれば、安全でありつつも攻められるデータ活用が理想だが、安全を担う人とスピードを出す人が同じであるケースは少ない。だからこそ、情報システム部門と業務部門が“協業”する必要がある。
「情報システム部門と業務部門、どちらが相手に手を差し伸べるのかというのは難しいところです。われわれは情報システム部門が手を差し伸べるべきだとメッセージを出していますが、これが違う媒体、例えばマーケティングや販売などを扱う媒体なら、その部門がITに働きかけなさいと言うでしょうね。両方の動きがかみ合えばハッピーかなと思います」(堀内氏)
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