メガクラウドベンダーが戦々恐々!? Dell EMCの新クラウド事業戦略とは?:Weekly Memo(2/2 ページ)
Dellと統合したEMCがクラウド分野で新たなパートナー施策を開始した。自らクラウドサービスを提供しない同社ならではの協業形態とはどのようなものなのか。そしてその狙いはどこにあるのか。
自らクラウドサービスを提供しないDell EMCならではの協業形態
以上がEMCジャパンのクラウドコネクトに関する発表内容だが、筆者はこの新たなパートナー施策に対し、「自らクラウドサービスを提供しないEMCならではの協業形態ではないか」という視点で非常に興味を抱き、それを確かめたくて取材を申し入れた。
あらかじめ上記の視点について説明しておくと、厳密にいえばEMCはグループ会社のVMwareやVirtustreamにおいて、特定領域に向けたクラウドサービスを提供している。だが、EMCはクラウドサービス市場で先行するAmazon Web Services(AWS)やMicrosoft、Googleなどと競合するサービスを自ら提供する戦略はとらず、むしろサービスプロバイダーに対してクラウド技術に優れたプロダクトを幅広く提供することに徹する構えだ。「自らクラウドサービスを提供しない」と表現した根拠はそこにある。
取材には、EMCジャパン執行役員でサービスプロバイダビジネス本部長の笠原直也氏、同本部ビジネス開発部長の岩田浩一氏、同部アライアンスアカウントエグゼクティブの竹内宏之氏が応じてくれた。
まず、笠原氏が筆者の視点について、クラウドコネクトを日本で始めた背景を含めて次のように話した。
「当社と提携しているCSP各社は、日本のビジネス習慣に合わせたさまざまな工夫により、メガクラウドベンダーのサービスと差別化を図りながら販売網を拡大している。一方、従来、オンプレミスでのビジネスが中心だった販売パートナーも、顧客の多様な要求に対応できるようクラウドサービスの再販や自社SIでのクラウド適用を進めることでポートフォリオを拡大し、ソリューション力を強化している。そうした両社のニーズにEMCが仲介役を果たし、最終的にユーザーに幅広い選択肢を提供できるようにしたいと考えた。そこで仲介役を担うEMC自身がクラウドサービスを提供していないことは、とりわけCSPの信頼を得る上で非常に重要なポイントになっている」
また、岩田氏はCSPのメリットについて、「販売網を拡大したいCSPにとって、約650社の販売パートナーとつがなることができるのは非常に大きな価値になる。しかも日本ではとりわけ全国各地域の“地場”のSI事業者と接点を持つことができるので、CSP各社から大きな期待を寄せていただいている」と語った。
さらに竹内氏も「販売パートナーがCSPのサービスを単に再販するだけでなく、各地域の個々の顧客ニーズに応じたソリューションを共同で開発していこうという動きが強まってきている。こうした動きも仲介役としてのEMCを信頼していただけている証しだと実感している」との手応えを語った。
取材時のコメントはもっと盛りだくさんだったが、いずれも「自らクラウドサービスを提供しないEMCならではの協業形態」を象徴するエピソードだったことが印象的だった。
その視点で、最後に挙げておきたいのは「Dell EMC」になってもそのスタンスは変わらないのではないか、ということだ。それというのも、Dellも自らクラウドサービスを提供していないからだ。むしろ、Dellが中堅中小企業に多くの顧客を保有していることを考えると、クラウドコネクトはさらに広がりを持つパートナー施策になりそうだ。
この点については両社統合後の事業の詳細がまだ不明なところもあるので、「正式なコメントは差し控えたい」(笠原氏)とのことだったが、3人の表情からは期待の大きさがうかがえた。
クラウド事業はパートナーエコシステムが決め手になると、本コラムでも度々述べてきたが、クラウドサービス事業者の展開はあくまで「1対n」なのに対し、Dell EMCは自らクラウドサービスを提供せず仲介役に徹するだけに「n対n」の関係となる。このユニークな協業形態が、今後のクラウドサービスの流通の仕組みにどのような影響を与えるか、注目しておきたい。
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