人工知能と人が、本当の意味で“話せる”ようになる日:【総力特集】人とAIの共存で進化する「おもてなし」(4/4 ページ)
昨今「Watson」や「りんな」など、人間と会話ができる人工知能が注目を集めている。しかし、これらは人間の心を理解してコミュニケーションを取っているかというと、そうではない。いつか本当に人工知能と人が心を通わせるような時代は来るのか。人間と雑談できる対話システムを開発し続ける第一人者に話を聞いた。
対話システムが、ディープラーニングで作れない理由
画像認識などの分野では、めざましい成果を上げているディープラーニングだが、雑談対話で精度が上がらない理由は“文脈”にあるのだという。
「ディープラーニングを端的に言うと、入力と出力のデータを大量に与えて、その関係性を大量のデータから学習していくというアプローチです。翻訳のように1対1で正解が決まっているものに対しては、ディープラーニングは有効な手段で成果も上がっています。雑談の場合、文脈によって答えが変わってしまう。文脈というのは本当に広いので、それを全て学習できるようなデータが世の中にないのです」(東中さん)
仮に文脈さえも網羅しているデータがあったとしても、雑談の法則を捉えることは難しく、相当うまいジャンル分けができない限りは、次の発言の選択肢が無限に広がってしまう。選択肢が増えるということは、正解を選ぶ確率が減ると同時に、コンピュータの処理時間も増える。いちいちシステムが発話するまで10秒も20秒もかかっていては、会話がその度に途切れてしまう。
そのため、NTTでは発言や意図の理解をルール化したり、機械学習などを組み合わせてシステム化したりしている。判断基準が“ブラックボックス化”してしまうディープラーニングと異なり、ユーザーの発言の意図を理解する部分、システム側の発話の意図を決める部分、発話の意図を正しく伝えられるよう文字化する部分など、複数のシステムをつなげる形で処理を行っているのだという。
「マツコロイド」で大失敗?
最近では、大阪大学の石黒浩教授との共同研究で、ジェミノイドHI-4(通称:イシグロイド、石黒教授に似せて作ったロボット)に、人間と雑談をさせる実験などを行っているという。
「会話の途中で相づちを入れたり、繰り返しを入れることでタイムラグを感じさせない工夫をしていまして、対話感は高くなってきています。実際、リアルなロボットにシステムを載せると、普通の会話のように、考えてしゃべっているような印象を相手に与えるため、間が長くなっても会話が持つ印象があります」(東中さん)
最近では、芸能人のマツコ・デラックスさんに似せたロボット「マツコロイド」に雑談機能を組み込んだ経験もある東中さん。テレビ番組でマツコさんと雑談をさせてみたものの「でも、マツコロイドはうまくいかなかった部分も多いんですよ」という。一体何が起きたのだろうか?(中編へ続く)
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