業界初、資生堂が84インチ「Surface Hub」を導入した理由:ITの力で全国の社員をつなぐ(4/4 ページ)
資生堂が社員の多目的ワーキングスペースに84インチの「Surface Hub」を導入。同スペースを運営するのは「未来創造局」という部署だという。何だか「化粧品の老舗ブランド」という資生堂のイメージとは違うような……? 実際にどのようなニーズや効果があったのか、担当者に聞いてみた。
リアルな場を起点に、遠隔地の社員ともつながる場所に
中田さんも萩原さんも、決して社員の平均的なITリテラシーが高いとはいえない同社で、個々の社員がSurface Hubを使いこなせるのか、という心配があったという。
そのため、アプリは極力分かりやすいデザインを心掛け、「PIT」に常駐するコンシェルジュが操作方法を教えたり、あえて有線のコネクタを見えやすいところに出して、PCとつなげやすくしたりするなど、さまざまな工夫をしている。
「歴史が長い会社ということもあり、資料を紙で配る文化が根強いなど、働き方に改善の余地があります。PITでSurface Hubを使ってみて『大画面で映した方が見やすいよね』など、新しい働き方やITツールの良さにだんだんと気付いてもらえればと思っています」(中田さん)
PITもSurface Hubの利用もまだ始まったばかり。ホワイトボードやオンライン会議以外にどんな使い方ができるのか、部内やさまざまな社員と考えていきたいという。中でも今萩原さんが注目しているのは「アイデアを生み出す」という役割だ。
「先日は遠隔地のオフィスの方にここを使って知ってもらう機会を作ったので、今後はそれぞれのオフィスからPITにつながってもらいたいです。未来創造局のメンバーは公募で集まったこともあり、私も含めて地方にいた人も実は多いんです。
だから、地方の元同僚たちにもぜひ、PITでやっているセミナーやいろいろな企画に参加してほしいという気持ちがあって。ここに来られなくても、オンラインで見てチャットで参加できるだけでも違いますよね。PITで起きる“知の交換”が他の場所にも広がっていくような仕掛けを、今後も考えていきたいです」(萩原さん)
萩原さんと中田さんからはPITを、そこでリアルに顔を合わせる社員たちのためだけのものにせず、ICTによって全国の社員がつながりあうハブにしていこうという意志が感じられた。“リアル”と“IT”の力を合わせた新たな取り組みで、老舗の日本企業の文化はどう変わるのか――彼女たちの挑戦は始まったばかりだ。
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