「データ分析ツールは“大人のオモチャ”のような存在であればいい」――カブドットコム 齋藤社長(4/4 ページ)
業務改善から新ビジネス創出まで、幅広い分野でデータ分析を駆使しているカブドットコム証券。データ分析ツールの利用者を増やし、データで物事を語る文化はどのようにして生まれたのか? 講演後のパネルディスカッションでその秘密が見えてきた。
データを活用できる組織に変わるために
参加者F: 当社もなかなか変われないのが悩みです。新しいツールを提案しても使わない理由ばかりで困っています。経営層から言われても、中間層がブロックしてしまう。経営層に言われなくても、少し使っている若手はいるものの、会社全体としては使わない状況が続いています。どうすれば良いんでしょうか?
齋藤氏: 当社は社員が好きなデバイス(携帯やPC、キーボードなど)を選んでいいようにしています。目的がちゃんとしていれば、道具は何でもいい。だからツールにこだわるという文化が、社員の意識の中にあるのかもしれませんね。企業にはそれぞれの文化があると思いますし、それに沿った行動が求められることもあります。文化を自ら作り出すぐらいの勢いで動くのが良いと思いますね。
寺澤: 先ほどから「文化」という言葉が多く出てきていますが、その文化はどう作ればいいのでしょう?
齋藤氏: そんなに文化を作っているという意識はないですよ。僕は「オープンにする文化」と各所で話していますが、実は社員はそんなこと思っていないかもしれません(笑)。ただ、「最低限、お客さまには恥ずかしいことしないようにしようね」とか「良いものは良いよね」とか「こいつ頑張ったよね」というのは、社員の共通意識としてあると思います。
意外に思うかもしれませんが、営業部門よりは管理部門、開発部門よりは保守部門の方がデータ活用をしているんです。これは現状を把握して、どのように改善すべきなのかという方向性と部門の特性が合っているのだと思いますね。
齋藤氏は自身で自在にTableauを扱えるほど、ITリテラシーが高いのは事実だ。しかし、「ウチは齋藤氏のような経営層がいないから、データ活用なんて進まない」と思考停止してしまうのではなく、齋藤氏が話した多くのヒントを参考にして、データ活用を一歩でも、二歩でも進められれば幸いだ。
筆者紹介:寺澤慎祐
大学卒業後に商社に10年勤務し、日本のITベンチャーでマーケティング責任者を務めたあと、サン・マイクロシステムズの政府官公庁向けビジネス開発を行う。2010年には英国ウェールズ大学のMBAを取得し、2011年にB2Bマーケティングコンサルタントとして独立。2015年にデータキュレーション社を設立した。現在は、データキュレーション社の代表であると共にビジネススクールで講師も務め、JDMC(日本データマネジメント・コンソーシアム)のユーザー会にも参加し、データ活用を啓蒙している。
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