視覚障害者にも安全な案内を――Beacon×Watsonで生まれた音声ナビの実証実験スタート:清水建設と日本IBM、三井不動産の3社が協力(1/2 ページ)
日本IBM、清水建設、三井不動産の3社が協力し、日本橋の「コレド室町」で音声ナビゲーションの実証実験を行う。高精度な位置情報と音声ナビゲーションにより、外国人観光客や車いす利用や、視覚障害者などへの実用可能性を探る狙いだ。
「右斜めを向いてください。そのまま、14メートル直進してください」「左に見えたエレベーターで2階に上がってください」
東京・日本橋の商業施設「コレド室町」で、2017年2月8日から3週間、スマートフォンアプリを使った音声ナビゲーションの実証実験が行われる。屋内や地下でも高精度な位置情報を取得できるBeaconを利用し、車いす利用者や、視覚障害者、訪日外国人を含む来訪者を、それぞれに適した誘導方法で、正確に目的地まで案内する。
目的地をアプリとの対話で決めるのも大きな特徴だ。例えば「中華料理が食べたい」などと話しかけると、アプリがお店を提案してくれる。「お願いします」と答えると、目的地までの案内が始まる仕組みだ。カーナビのように、分岐点に差し掛かると、目的地に向かう方角の道を指示していく。音声は日本語と英語に対応する。
使うユーザーの属性でナビゲーションの内容も変わる。一般歩行者には最短経路を示し、車いす利用者に対しては、階段や段差のない経路を選ぶ。視覚障害者の場合は、点字ブロックの存在など、スムーズな移動に必要な細かい情報が加わる。
清水建設と日本IBM、三井不動産の3社が協力
実証実験の実施にあたっては、清水建設と日本IBM、三井不動産の3社が協力した。清水建設がナビゲーション用の地図として空間情報データベースを構築。三井不動産がコレド室町内の店舗情報や施設情報を提供した。
日本IBMは、5〜10メートルの間隔で天井に設置したBLE(Bluetooth Low Energy)対応のBeaconから発した電波強度を分析する、屋内測位のためのアルゴリズムを開発したほか、IBM Watsonなどに使われているコグニティブ技術をもとに、アプリにおける音声対話インフラを構築した。
視覚障害者も安全に利用できるように、位置情報の誤差は「白杖で周囲の環境を把握できる、1〜2メートル程度に収まるように調整している」(日本IBM)という。スマートフォンに搭載している加速度センサーとジャイロセンサーを使い、体の向きなども推測できるため、エレベーターの中でどの方向にボタンがあるのか、といった情報まで提供可能だとしている。
3社で実証実験の検討を始めたのは2016年5月。同年9月にインフラの整備を始め、3カ月後に12月には、人を使った実験を開始した。視覚障害者向けのナビゲーションシステムは、もともと、2015年中に清水建設と日本IBMが開発していたという。
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