カプコンに“攻めのIT”部隊が生まれる日:データがクリエイターとビジネスをつなぐ(3/3 ページ)
BIツールを使い、データ分析文化が広がりつつあるゲーム業界大手のカプコン。同社では、今オンラインサービス関連業務の組織改革が進んでいるという。部門横断の新組織が生まれた背景やビジョンを聞いた。
データが作り手と売り手をつなぐ“共通言語”に
カプコンに入社した高野さんは、ゲームを作るクリエイターとセールスを担うメンバーとの意思疎通がうまくいっていないと感じたという。外から入った“異分子”として、作り手と売り手、両方の意見を聞ける立場だった彼は、両者をつなぐ手段がないか模索したそうだ。
「モノの作り手と売り手、どちらにも譲れない部分があって、古くからいる人同士がの会話がなかなかかみ合わない、そんなもどかしさがありました。どうにかできないかと考える中で『これだ!』と感じたのがデータ分析でした。自分の感性を信じてゲームを作るクリエイターと、ファクトとロジックでビジネスを語る人達の共通言語が作れると思ったんです」(高野さん)
二瓶さんも大きくうなずく。
「開発の人って、面白いものを作るのに命を懸けているような人が多いので、横から『売れなきゃ意味がない』みたいなことを言われると不満に思う人もいるわけです。でも、お互いが目指すゴールは変わらないはず。たくさんの人が遊んで利益が上がれば、そのゲームをどんどんアップデートできますし、パッケージ製品であれば、次回作の資金ができる。
そのイメージを統一するのにデータが役に立つのだと思います。開発の人とビジネスの人が一緒にTableauの画面を見て、『俺は、ここでこう動くと思ってたんだよ!』、『やっぱり、ココが刺さったんだよね』とか言いながら一緒に仲良くお酒を飲む――みたいな文化が広がっていけば最高です」(二瓶さん)
カプコンに“攻めのIT”部隊が生まれる日
二瓶さんは今後、データ分析の基盤を共通化し、複数タイトルの状況をひと目で確認できるようにしたいと言う。
「ゲームと一口に言っても、パズルゲームもあればアクションゲームもあるし、RPGゲームもある。分析すべき内容も全く異なるように思えますが、オンラインの運用型ゲームの場合、お客さんが来てプレイを1回終えるまでにどんな行動をしたかというエッセンスの部分は、ある程度共通化できると思うんです。
それができれば、例えば、あるタイトルでこんな分析をしたいと作ったものが、そのまま他のタイトルに応用できます。Tableauだったらブックを渡して接続先を変えるだけで、そのタイトルに合わせた分析結果を即座に出せる。まずは共通の基盤を整えて、各ゲームタイトルの状況が見られるようにしたいですね」(二瓶さん)
また「ゲームに深く精通している人が、分析もできるようになる」という状態を目指し、分析の必要性を感じていそうな人に「やってみる?」と声をかけるということから、コツコツと始めているところだそうだ。手を変え品を変え、社内のさまざまな人と会話をしながら、立場が違う人達が同じ目標に向かっていけるようにする。高野さんは、そんな二瓶さんの“社内営業力”を買っている。
今は「通信技術」という名前が前面に出がちだが、「われわれは『オンラインサービスの基盤を支えているんだ』と常々メンバーには話しています」と高野さん。R&Dの範ちゅうを超え、オンラインサービス全般のITをサポートをする、というチームのミッションを内外に説明して回る日々だという。クリエイターとビジネスをデータでつなぎ、インフラから事業の変化を支える――カプコンに“攻めのIT”部隊が生まれる日は近い。
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