ユーザーの言いなりになるのがメーカーの仕事ではない:失敗しない「外資系」パッケージソフトとの付き合い方(2/3 ページ)
外資系パッケージソフトの導入で失敗しないための方法を解説する本連載。パッケージソフトウェアを導入する際に陥りやすい落とし穴を紹介しています。今回はソフトウェアのバージョンアップのお話。現行バージョンをできるだけ使いたいというニーズ、特に日本だと多い話のようですが……?
変化を嫌う現場担当者、その理由
最も大きな要因は、「現状の運用をできるだけ変えたくない」という心理でしょう。望んでもいないバージョンアップに労力をかけるくらいなら、多少のお金を払ってでも今の状況を続けられる方がいいという発想です。
ただ、それには大きな前提があります。それは「システムを取り巻くビジネスの環境が変わらない」こと。今やほぼ成立不可能な条件ではないでしょうか。事業との関係が薄い、安定運用をミッションとするような運用部門にその決定権があるのは、厳しい言い方をすれば、「致命的」といえます。
変化する環境に応じて、できれば先手を打って競争優位性を保つ――。ビジネスのデジタル化が進む昨今、これができなければ企業は競争に敗れてしまいます(その市場を独占していない限りは)。もちろん、運用部門が安定運用のためにリスクを排除するのは大切ですが、もしもそれが将来のビジネスの芽をつむようなものであれば本末転倒です。会社がつぶれてしまっては元も子もありません。
運用部門の責任者が、事業に対して才覚がある人ならば、恐らく異なる選択肢も考慮するでしょう。グローバルで展開する外資系ソフトウェア企業、特にそれが大規模であればあるほど、世の中の変化やトレンドには敏感です。米国に本社がある企業なら、新規にリリースされたものが数年たって日本で使われ始めることも珍しくありません。
ソフトウェアのバージョンアップを「世の中は今後こんな方向に向かうのか」というサインとして受け取れる人であれば、即時の対応は難しくても、新たな機能を自社の将来に対してどう活用できるか、考えて提案、実行することができるのではないかと思います。
運用現場でこのような判断がなされる要因は、現場を取り巻く環境にもあると思います。これまで私が見てきた日本企業のIT運用の現場は、そのほとんどがトラブルがなくて当たり前、あったらマイナスの減点方式で評価をしていました。これでは、新しいことを忌避する思考になるのも仕方ないように思えます。
事実、変化や挑戦が奨励され、そのためには多少のリスクもいとわないという現場は皆無に近く、実際にシステムを大胆に変えることに成功したのは、部門の統括責任者など、トップが強い意志で統率している会社でした。
今や古典芸能や文化でさえ、生き残りを賭けて、新しい取り組みに挑戦する時代です。本来、変化の最先端であるべきITを扱う現場で、このような全く逆の話に遭遇するたびにいつも違和感を覚えます。
しかし一方で、メーカーが提案する新バージョンを“うのみ”にして採用することも危険です。
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