ユーザーの言いなりになるのがメーカーの仕事ではない:失敗しない「外資系」パッケージソフトとの付き合い方(3/3 ページ)
外資系パッケージソフトの導入で失敗しないための方法を解説する本連載。パッケージソフトウェアを導入する際に陥りやすい落とし穴を紹介しています。今回はソフトウェアのバージョンアップのお話。現行バージョンをできるだけ使いたいというニーズ、特に日本だと多い話のようですが……?
ホンネで語り合えるメーカーを見つけよう
ソフトウェアの新バージョンが、散々な評価を受けて失敗してしまうというのも、ありがちな話だからです。かのMicrosoftでさえ、「Windows 8」を世に出したときはユーザーから厳しい評価を受けたのは記憶に新しいところです。
ソフトウェア企業が一方的に新機能を売り込んでもうまくいきませんし、ユーザーの一方的な論理で、枯れたソフトウェアを使い続けるのも将来性がありません。重要なのは、立場が異なる両者の対話です。新機能を使ってほしいメーカーと、自社の事業を成長させたいユーザーが、変化に対して積極的に対話することで、最適な利用法や移行計画が生まれ、ソフトウェアの機能を最大限活用できるのです。
「結局、最後はコミュニケーションか」と思われるかもしれませんが、両者の利害が絡むビジネスは、「どちらか一方が話を進めてもいいことがない」というのが定説です。特に日本では、「お客さまは神様です」という有名な言葉に代表される通り(本来は異なる意味なのですが)、ユーザーの立場が強く、そのバランスが取れないときが往々にしてあります。
そんな時、メーカーがユーザーの言いなりになると、その道のプロであるメーカーの提案が生かされず、結果的にユーザーの不幸を招いてしまいます。
逆に、メーカーが「これが世界のトレンドだ」と一方的に自社の都合を押し付けてもよい結果は生まれません。ユーザー個別に事情があり、柔軟性の高いソフトウェアであればあるほど、そのソフトウェアが効果を最大限に発揮できるよう、メーカー側もユーザーの状況や考えをよく理解する必要があります。ソフトウェアのバージョンアップの場面でも、そのような建設的な議論があって初めて、いい結果が生まれるのです。
最後に今回のメッセージを端的に表す、フィレンツェのある有名な職人の言葉を引用しましょう。
『いいかい? お客さんが気にいったからと言って、「はい、その通りにします」はダメだ。2人がいいと思うこと。お客さまが好きなものを選ぶ世界ではない。似合うものを私が作る世界なんだ』
ぜひ、そんなお付き合いのできるメーカーを、そしてユーザーを見つけてもらればと思います。
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