膨大なシステムアラート、対応すべきはたった3%だった IIJの運用管理を激変させた“効率化のワザ”(1/2 ページ)
オンプレミスからクラウドサービスまでハイブリッドシステム環境の運用を担当するIT部門の現場。複雑化する一方の運用管理をラクにする方法はあるのか。
クラウドサービスは今や、企業にとって当たり前のシステム基盤になりつつある。昨今は、全てのシステムをオンプレミス環境だけで構築している企業を探すほうが難しいかもしれない。
経営判断のスピードを上げたり、業務部門の生産性を高めたりと、ビジネスのさまざまな現場で効果を上げているクラウドだが、その運用管理の複雑さはIT部門の業務に大きな影を落としている。クラウドサービスやオンプレミス環境があちこちに散在するハイブリッド環境の運用管理はたやすいことではないからだ。
「運用の効率化も考えてクラウドサービスを導入したはずなのに、運用負荷は高まる一方、という結果を招いているのです」――。とインターネットイニシアティブ(IIJ)サービス基盤本部の福原亮氏は、こう指摘する。
「ハイブリッド環境でシステムを運用管理している現場では、3つの大きな課題に直面しています。それは『ナレッジ不足』『障害対応の基本フローの未整備』『業務体制と役割のミスマッチ』という課題です」(福原氏)
現場が直面する「運用管理、3つの課題」
運用の現場では、知見をためていくことが業務の効率化につながるが、多くの現場ではそれが難しい状況だという。
「障害が発生したときに、その原因がハードウェアにあるのかソフトウェアにあるのか、どのように対処したのか――といったことを詳細に分類しなければナレッジにはなりません。ならナレッジベースの器を作ればよいかというと、そう簡単な話でもない。その器に“情報をきちんと入力しよう”というルールを決めたとしても、運用担当者はある障害アラートに対応したら、次のアラートが待っているといった状況であり、とてもルールを守って入力することができないのです」(福原氏)
「ナレッジベースには単に入力するだけでなく、それが正しいかどうかを検証した上で情報としてためていかなければなりません。他の担当者がナレッジを読んだときに理解できなければ意味がないのです。その検証の手間がかかるため、ナレッジの蓄積につながらないのです」(IIJクラウド本部の土岐田尚也氏)
こうした背景から結果的にナレッジが不足し、いつまでたっても“担当者の職人芸”の域から抜け出せないのだという。
関連記事
- クラウドで複雑化する運用管理、もう限界 属人化からの脱却法とは
マルチクラウド時代の運用管理とはどうあるべきなのか。IIJがその課題を示し、最適解を目指したソリューションを発表した。果たして、企業にとってどこが問題なのか。 - 今こそ見直しの時 ハイブリッド、マルチクラウド時代の運用管理術
クラウド導入で運用管理の手間を軽減できるはずだったのに、かえって作業が増えてしまった――。オンプレと複数クラウドの混在環境が当たり前になりつつある今、複雑化する一方の運用管理をどうやって整理すればいいのか。IDC Japanの入谷氏に聞いた。 - クラウド時代の統合運用管理を成功に導く5つのポイント
企業内にオンプレミスとクラウドの混在環境が増える中、IT部門はどんな方法で運用管理を効率化させていけばいいのか。IDC Japan アナリストの入谷光浩氏によると、5つのポイントがあるという。 - 複雑化するハイブリッドクラウド時代の運用管理、解決策は
企業のIT基盤としてハイブリッドクラウドが注目を集めているが、統合運用管理の複雑化が課題となっている。この問題に解決策はあるのか。 - 第14回 企業規模でみるシステム運用管理のアウトソーシング方法
ITシステムをMSPへアウトソースする際に、IT部門が考慮しなければならない点はたくさんあります。今回は自社の規模という視点からMSPに対するアプローチの方法を紹介します。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.