マイクロソフトが狙う“クラウドID経済圏”の獲得:Weekly Memo(1/2 ページ)
日本マイクロソフトやラックなど、IT企業8社が、クラウド環境でのIDセキュリティ普及促進団体を発足した。この動きの背景には“クラウドID経済圏”をめぐる勢力争いもありそうだ。
「ID-based Securityイニシアティブ」発足の背景
「クラウド時代のセキュリティ対策は、散在する情報にアクセスする人、つまりIDの活用が非常に重要になってくる」―― ラックの西本逸郎社長は、同社や日本マイクロソフトなど、IT企業8社がクラウド環境でのIDセキュリティ普及促進に向けて6月23日に活動を開始した新団体「ID-based Securityイニシアティブ」発足の記者会見でこう強調した。
クラウド向けセキュリティでID活用が非常に重要になるとはどういうことか。会見で説明に立った西本氏および日本マイクロソフトの高橋明宏執行役常務ゼネラルビジネス担当、佐藤久クラウド&エンタープライズビジネス本部 業務執行役員本部長によると、次のような背景から新団体の発足に至ったという。
クラウドサービスやIoT(Internet of Things)サービスなどの普及により、インターネット環境下であれば、場所を問わず、さまざまなデバイスから企業システムへアクセスできる環境が整いつつあり、利用ニーズも高まっている。
しかし、こうした企業システム環境の変化によって、持ち込みPCによるウイルスへの感染が発生するなど、「企業内ネットワークにおけるセキュリティ対策」だけでは十分な対策を講じることは難しくなってきている。多くの企業ではユーザー、デバイス、アプリケーションなどに制限を設けたり、用途に応じてネットワークを分離したりするなど、利用制限を設けた運用によってセキュリティを担保しているのが現状だ。
一方、クラウドを利用したSaaSアプリケーションの導入やモバイルの利用も急速に進んでおり、ユーザー、IT管理者ともに、複数のIDとパスワード、モバイル端末の管理、運用がセキュリティ対策上の新たな課題となっている。
ID-based Securityイニシアティブは、そうしたクラウドサービスの普及に伴うセキュリティとIDの課題を解決し、企業システムへのアクセスを、いつでもどこからでもどんなデバイスからでも、安全かつ適正に実現することを目的として発足した。
具体的には、既存の「ネットワークにおけるセキュリティ対策」に加え、ユーザーやデバイスなどに個々に割り振られたIDを活用する「IDベースのセキュリティ対策」の普及促進に向けて、セミナーの開催や共同検証に実施、技術資料の提供、導入事例の提供、関連機関への働きかけといった幅広い活動を展開するというものだ(図1)。
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